米Mount Sainai School of MedicineのValentin Fuster氏

 糖尿病多枝冠動脈疾患の認められる患者には、冠動脈バイパス術CABG)の方が、薬剤溶出性ステントDES)による経皮的冠動脈インターベンションPCI)よりも、5年までのアウトカムは良好であることが分かった。これは、米Mount Sainai School of MedicineのValentin Fuster氏らが行ったFREEDOM試験で明らかにしたもので、成果は11月3日にロサンゼルスで開幕した第85回米国心臓病学会・学術集会(AHA2012)で発表された。

 これまでに、糖尿病患者に対するCABGがPCIよりアウトカムが良好であることを示す試験結果は発表されていたが、DESによるPCIとCABGとを比較した大規模試験はこれが初めてという。米国立衛生研究所(NIH)によると、CABGまたはPCIを必要とする患者のおよそ25〜30%に、糖尿病で多枝冠動脈疾患が認められるという。

 Fuster氏によると、こうした患者の多くが現状ではPCI/DESを行っており、今回の試験結果を受けて、「臨床現場に変化が訪れるだろう」と語った。

 FREEDOM試験では2005〜2010年にかけて、世界140カ所の医療機関を通じ、糖尿病で多枝冠動脈疾患の認められる患者1900人を無作為に2群に分け、一方にはDESによるPCIを、もう一方にはCABGを行った。被験者の平均年齢は63.1歳(標準偏差:9.1)、女性は29%だった。3枝冠動脈疾患が認められたのは、83%だった。

 被験者全員が、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール、収縮期血圧、糖化ヘモグロビンの標準的薬剤治療によるコントロールを行った。

 追跡期間は2年以上で、生存者の追跡期間中央値は3.8年だった。主要評価項目は、総死亡、非致死心筋梗塞または非致死脳卒中の統合イベントだった。

 試験の結果、主要評価項目の5年発生率は、PCI群が26.6%だったのに対し、CABG群は18.7%と有意に低率で(P=0.005)、率格差は7.93ポイント(95%信頼区間:3.33-12.54、P<0.001)だった。

 中でも5年心筋梗塞発症率は、PCI群が13.9%に対しCABG群は6.0%、5年総死亡率はそれぞれ16.3%と10.9%と、いずれもCABG群が有意に低率だった(それぞれ、P<0.0001、P=0.049)。

 一方、5年脳卒中発症率は、PCI群が2.4%(22人)に対し、CABG群は5.2%(37人)と2倍以上に上った(P=0.034)。CABG群の脳卒中発症者のうち16人は、CABG実施30日以内に発症した。

 なお、Fuster氏は、同試験の限界として追跡期間が短い点を挙げ、今後継続して同試験を追跡することで、より信頼性の高い長期アウトカムが明らかになるとした。

 コメンテーターからは、同試験で潜在的被験者の多くが、PCI実施を希望して試験への参加を拒否した点に触れ、「CABGとPCIの選択肢については、冠動脈造影の前に行い、患者に考える時間を十分与えるべきだ」などと語った。

(日経メディカル別冊編集)