フランスPitie-Salpetriere大学のGilles Montalescot氏

 経皮的冠動脈インターベンションPCI)の実施前後に、抗血小板薬不応性検査を行い、抗血小板薬の種類や投与量の調整を行っても、死亡や心筋梗塞、脳卒中などの複合イベント発生リスクは減少しないことが分かった。2500人弱について行った無作為化比較試験「ARCTIC」で明らかになった。フランスPitie-Salpetriere大学のGilles Montalescot氏らが、11月3日にロサンゼルスで開幕した第85回米国心臓病学会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 同研究グループは、フランス38カ所の医療機関を通じて、薬剤溶出性ステント(DES)留置術の実施が予定されている患者、合わせて2440人について、無作為化比較試験を行った。同グループは被験者を2群に分け、一方にはPCI実施前と実施後14〜30日に抗血小板薬不応性検査を行い、反応性が不十分な人に対しては抗血小板薬の種類の変更や投与量の調整を行った(検査群)。もう一方には血小板機能検査を行わず、従来通りの抗血小板薬投与を行った(対照群)。

 主要評価項目は、死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、緊急血行再建術の統合イベント発生だった。

 検査群では、PCI前のアスピリンに対する抗血小板薬不応性検査で、アスピリン反応単位(ARU)が550以上の人には、アスピリン500mgの静脈投与を行った。P2Y12阻害薬に対する血小板反応性が235血小板反応単位(PRU)以上や、トロンビン受容体活性化ペプチドで誘発した凝集抵抗性の変化がベースライン時に比べ15%以下である人について、抗血小板薬を調整した。具体的には、糖タンパク質IIb/IIIa阻害薬とクロピドグレル(負荷量600mg以上)、またはプラスグレル(負荷量60mg)を投与し、術後はクロピドグレル150mg/日またはプラスグレル10mg/日を投与した。

 PCI後14〜30日の検査でPRUが550以上の人には、アスピリン投与量を2倍に、血小板反応性が325PRU以上または凝集抵抗性の変化がベースライン時に比べ15%以下の人にはクロピドグレル投与量を75mg以上増量、またはプラスグレル10mg投与に変更した。さらに凝集抵抗性の変化がベースライン時に比べ90%超の人で、プラスグレル10mg投与またはクロピドグレル150mg投与をしていた場合には、いずれもクロピドグレル75mg投与に変更した。

 その結果、検査群でクロピドグレル服用者の34.5%、アスピリン服用者の7.6%が、抗血小板薬の調整を行った。

 主評価項目の発生率は、検査群が34.6%で対照群が31.1%と、両群で有意差はなかった(ハザード比:1.13、95%信頼区間[CI]:0.98-1.29、P=0.10)。

 副次評価項目のうち、ステント血栓症または緊急血行再建術のどちらかの発生についても、検査群が4.9%、対照群が4.6%(ハザード比:1.06、95%CI:0.74-1.52、P=0.77)と、両群で同等だった。

 大量出血の発生率もまた、検査群が2.3%で対照群が3.3%(ハザード比:0.70、95%CI:0.43-1.14)と、両群で有意差はなかった(P=0.15)。

 ディスカッサントで米国Michigan大学のEric R. Bates氏は、今回の試験で抗血小板薬不応性の人に対して行った調整は、「積極的な“個別化”だ」とコメントした。その上で、今回の試験結果と、既に発表されている抗血小板薬不応性の患者に対する抗血小板薬の調整投与に関する試験結果でアウトカムの改善が認められない点を総括し、「今のところ、抗血小板薬不応性による治療の個別化は、アウトカムを改善しないと言えそうだ」と語った。

(日経メディカル別冊編集)