Georgia Health Sciences UniversityのAvirup Guha氏

 肝移植後にメタボリック症候群と診断された患者は、メタボリック症候群でない患者と比べ、心血管イベントリスクが2倍、心筋梗塞リスクは4倍上昇することが報告された。11月3日に米国ロサンゼルスで開幕した第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で、Georgia Health Sciences UniversityのAvirup Guha氏らが後ろ向きコホート研究の結果について発表した。

 もとの肝臓を取り去り、そこに新しい肝臓を移植する同所性肝移植(OLT)を行った患者の約3分の2は、5年以内にメタボリック症候群になることが報告されている。移植後に使用する免疫抑制剤が、メタボリック症候群への進行に関与していると考えられている。しかし、同所性肝移植後にメタボリック症候群と診断された患者を対象にした心血管疾患罹患率や死亡率のデータは限られており、その関係性については不明だ。

 そこで、Guha氏らは、同所性肝移植後のメタボリック症候群は、心血管イベントリスクの上昇に関与していると仮定。同所性肝移植を行った成人の末期肝疾患患者を対象に、心血管イベント率と心血管イベントによる死亡率を検討した。

 対象は、1987〜2011年に同所性肝移植を行った成人の末期肝疾患患者428人。患者データは、電子カルテから抽出した。心血管イベントには、冠動脈疾患と脳卒中を含めた。心血管疾患による死亡には、不整脈と心不全による死亡を含めた。患者背景としては、男性が64%で、白人が79.5%を占めた。

 解析対象期間中(1987〜2011年)に、55.8%の患者が死亡した。主な死亡理由は、生着不全が17.9%、心血管疾患が17.4%、感染が21.4%だった。

 また、およそ3分の1の患者が、同所性肝移植後にメタボリック症候群と診断された。うち、糖尿病患者は46.9%を占めた。

 メタボリック症候群の有無別に患者の転帰を調べたところ、非メタボリック症候群の心筋梗塞イベントの発生率は3.7%だったのに対し、メタボリック症候群患者では14.3%と有意に高値だった(P=0.02)。また、全心血管イベント発生率は、非メタボリック症候群では37.6%、メタボリック症候群では73.4%となり、有意差が見られた(P<0.001)。一方、脳卒中イベント発生率(10% 対 25%)、全死亡率 (50% 対 41.9%)、心血管イベントによる死亡率(13.3% 対 18.2%)においては両群間に有意差はなかった。

 これらの結果から、Guha氏らは、「同所性肝移植後のメタボリック症候群患者は、非メタボリック症候群患者と比べ、心血管イベントリスクが2倍、心筋梗塞リスクは4倍上昇した。今後の研究で、リスクを積極的に減少させる治療戦略、または免疫抑制剤のレジメンを変更することで、心血管イベントを抑制できるかについて検討する必要がある」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)