米国Brigham and Women’s HospitalのRoopinder K Sandhu氏

 喫煙は心臓突然死(SCD)の重大なリスク因子だが、冠動脈疾患(CHD)に罹患したことがない人において、禁煙がSCD発症を軽減させるというデータはほとんどなかった。10万人規模の約30年間にわたる追跡結果から、CHD既往のない女性において、禁煙がSCDリスクを減少させることが示された。フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、米国Brigham and Women’s HospitalのRoopinder K Sandhu氏らが報告した。

 Roopinder氏らは喫煙とSCD発症リスクの関連を、「Nurses’ Health Study(NHS)」に登録している30〜55歳の女性看護師で検討した。NHSには12万1701人が登録されているが、今回の検討では、心血管疾患や脳卒中、癌の既往例、喫煙データに不備がある人などを除き、10万1018人を前向きに追跡した。SCDについては、医療記録や利用可能であれば剖検所見を基に、家族に死亡時の状況をインタビューし、症状発生から1時間以内の死亡と定義。1980年から2010年末までの発症をフォローした。

 ベースライン時における喫煙状況は、これまで喫煙経験のない非喫煙群が4万4904人(44.5%)、禁煙群が2万6684人(26.4%)、喫煙群が2万9430例(29.1%)。なお、平均喫煙期間は、禁煙群が14.7年、喫煙群が26.6年だった。

 10万人年当たりのSCD発症率は、非喫煙群が11、禁煙群が15、喫煙群が19だった。さらにSCD発症の非喫煙群に対するハザード比を、年齢、糖尿病、高血圧、高脂血症、BMI、アルコール摂取量、運動時間、閉経後ホルモン療法、アスピリン服用、マルチビタミン使用、ビタミンE使用、心筋梗塞の家族歴といった変数で補正し算出すると、禁煙群が1.40(95%信頼区間[CI]:1.10-1.78)、喫煙群が2.42(95%CI:1.78-3.28)で、有意な傾向が認められた(P for trend<0.0001)。

 喫煙群で1日の喫煙本数別にSCD発症のハザード比を同様に補正して求めると、1〜14本は1.83(95%CI:1.15-2.91)、15〜24本は2.59(95%CI:1.72-3.90)、25本以上は3.26(95%CI:2.02-5.27)と、本数が増えるにつれリスクが有意に高まっていた(P for trend<0.0001)。

 喫煙群における喫煙継続年数別にSCD発症の補正済みハザード比を見ると、12年以下は1.36(95%CI:0.92-1.99)、13年以上24年以下は1.03(95%CI:0.69-1.52)、25年以上35年以下が1.47(95%CI:1.04-2.07)、35年以上が2.20(95%CI:1.69-2.87)と、年数が長くなるほどリスクが有意に高まる傾向が認められた(P for trend<0.0001)。

 反対に、禁煙後の経過年数別にハザード比を算出すると、年数がたつほどハザード比が有意に低下する傾向が認められた(P for trend<0.0001)。また、15年を超えるとハザード比が喫煙群に対し有意に低くなっていた。

 さらに、CHD既往のない群とある群に分けて、SCD発症のハザード比を禁煙後の経過年数別に見ると、既往のない群では、5年までは0.46、5〜10年は0.64、10〜15年は0.34、15〜20年は0.54、20年以上は0.43と、いずれも禁煙によりリスクが低下していたが、5〜10年と15〜20年では有意差に至らなかった。一方、既往のある群では順に2.23、1.33、1.93、0.39、0.56であったが、いずれにおいても有意ではなかった。

 これらの結果からRoopinder氏らは、「喫煙本数が増えるほど、また喫煙年数が長くなるほど、SCD発症のリスクは高まっていた」と述べた上で、「CHDの既往がない場合、禁煙はただちにSCDリスクを軽減していた。一方、既往者の場合は徐々にリスクが減少する傾向があるようだが、さらなる検討が必要だ」と語った。

(日経メディカル別冊編集)