韓国Asan Medical CenterのDuk-Hyun Kang氏

 感染性心内膜炎の治療では、全身性塞栓症のリスクを軽減する上で外科手術が有用なのか、またどのタイミングで行うのが適切なのかは明らかではなかった。今回、韓国Asan Medical CenterのDuk-Hyun Kang氏らは、感染性心内膜炎患者に対して早期に外科手術を行うことで塞栓性合併症の発生リスクが低下することを明らかにし、その結果をフロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術会議(AHA2011)で報告した。

 Kang氏らが行ったEASE試験は、2006年〜2011年に、韓国の2施設で実施された前向きオープンラベル無作為化試験。塞栓症のリスクが高い感染性心内膜炎患者を対象に、従来療法と早期外科手術の塞栓性合併症の抑制効果が比較検討された。

 対象は入院後24時間以内に血液培養および経食道心エコー所見から感染性心内膜炎と疑われた患者で、年齢は15〜80歳、Duke基準で左側自然弁心内膜炎と判定され、僧帽弁と大動脈弁の障害が重度で、組織過形成の長さが10mmを超える症例とした。緊急外科手術の適応例、塞栓症のリスクが低く薬物療法が適応となる症例は除外した。

 本試験には134例が登録されたが、緊急手術が必要な26例、薬物療法の適応となった18例などが除外され、最終的には76例が早期外科手術群(37例)あるいは従来療法群(39例)にランダムに割り付けられた。早期外科手術群では、外科手術はランダム化から48時間以内に実施し、従来療法群では現行の診療ガイドラインに則って治療を行った。

 主要評価項目は、入院中の死亡、ランダム割付から6週後の臨床的塞栓性合併症の複合とした。また、副次評価項目として、6カ月後の全死亡、塞栓性合併症、感染性心内膜炎の再発、再入院の複合を評価した。なお、塞栓性合併症とは、新規病変の出現に伴う塞栓症の急性発症と定義した。

 両群とも年齢は46〜48歳、男性比率が7割弱で、背景、弁疾患の種類には有意な違いは認められなかった。弁疾患は僧帽弁のみが約60%、大動脈弁のみが約30%、残りは両弁の障害で、重度の弁逆流が大半を占めた。両群とも左室駆出率は約61%で、組織過形成は14mmだった。感染菌は約6割がStreptococcusで、約2割は培養陰性だった。

 追跡期間中に主要評価項目は、従来療法群では9例(23%)、早期外科手術群では1例(3%)で発生し、発生リスクは早期外科手術群で有意に低かった(P=0.014)。その内訳は、入院中の死亡が両群で1例ずつ、6週間以内の塞栓性合併症は従来療法群では8例で発生したが、早期外科手術群では発生しなかった。

 副次評価項目は、従来療法群では11例(28%)、早期外科手術群では1例(3%)で発生し、発生リスクは早期外科手術群で有意に低かった(P=0.003)。その内訳は、死亡が従来療法群2例(5%)、早期外科手術群1例(3%)で、塞栓性合併症と感染性心内膜炎の再発は従来療法群でのみそれぞれ8例(21%)、1例(3%)で発生した。

 全死亡率は、従来治療群が5.1%だったのに対して早期外科手術群は2.7%で、ハザード比0.513(95%信頼区間[CI]:0.047-5.662、P=0.586)と、統計学的には有意な差に至らなかった。一方、主要および副次評価項目となったイベント発生については、従来治療群28.2%に対して早期外科手術群2.7%で、ハザード比0.083(95%CI:0.011-0.640、P=0.017)と、早期外科手術群で有意に少なかった。

 以上の検討からKang氏は、「組織過形成の著しい感染性心内膜炎患者では、早期外科手術を行うことで従来療法に比べて死亡、塞栓性イベントの複合イベントの発生が有意に抑制される」と結論し、「早期外科手術のベネフィットが複雑性感染性心内膜炎においても得られるかどうか、ランダム化比較試験を行う必要がある」と述べた。

 なお、ディスカッサントである米国Ohio State University Medical CenterのRobert Higgins氏は、感染性心内膜炎に対して早期外科手術は有用だとしながらも、EASE試験については、「緊急外科手術や薬物療法の適応例をなぜ除外したのか、また感染性心内膜炎で高頻度で認められる中枢神経系合併症にどう対処し、評価したのかが不明だ」とコメントした。

(日経メディカル別冊編集)