神戸大学保健管理センターの竹迫大伸氏

 アンジオテンシンIIタイプ1受容体(AT1R)が活性化した時にとる立体的な構造(立体配座:コンフォメーション)が、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の一部が持つ逆作動薬(インバースアゴニスト)活性を減弱させることが明らかになった。神戸大学保健管理センターの竹迫大伸氏が、フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で報告したもの。今後、この分子的機序の解明を進めることで、AT1受容体が活性化していてもインバースアゴニスト作用を発揮する新規ARBの開発につながる可能性を秘めているという。

 AT1受容体は、リガンドであるアンジオテンシンIIが結合しなくても自律活性と呼ばれる一定の活性を持っている。ARBはAT1受容体に結合してアンジオテンシンIIの結合を阻害するが、インバースアゴニスト作用を有するものは、自律活性をも抑制できる。この作用の有無や大きさは、個々のARBの効果を特徴付ける要因の1つになっている。

 AT1受容体に対するARBの結合力(結合アフィニティ)は、AT1受容体が活性化状態になると、基底状態に比べ、著しく減弱することが知られている。竹迫氏は、「このことは、AT1受容体の自律的な活性化コンフォメーションの変化が、ARBの結合モードを変化させ、インバースアゴニスト作用まで変化させることを示唆している」と指摘する。

 同氏らはこのほど、野生型AT1受容体を基底状態、恒常的に活性化しているN111G変異型を活性化状態のモデルとして用い、ロサルタン、EXP3174、バルサルタン、イルベサルタンという4つのARBについて、AT1受容体の活性化状態が、それぞれのARBへの結合アフィニティとインバースアゴニスト活性に与える影響を検討、結合アフィニティとインバースアゴニスト作用に対する変異型の効果に基づく分子モデルを作成し、機序の解明を試みた。 

 その結果、ARBは、AT1受容体が基底状態で不活性化コンフォメーションをとっている時には、Val108、Ser109、Gln257、Asn295と相互作用して強い抑制ネットワークを形成することで、強力なインバースアゴニスト作用を発揮すると考えられた。

 一方、AT1受容体が活性化して活性化コンフォメーションをとった場合、ARBとGln257、Asn295との相互作用が減弱してAT1受容体が不安定になり、インバースアゴニスト作用が減弱することが示された。

 竹迫氏は、「これらの知見は、AT1受容体が基底状態のときだけでなく、活性化状態でもインバースアゴニスト作用を発揮する新規ARBを開発する上で、重要なアイデアを提供するものだ。このような新規ARBは、高血圧や心肥大など、AT1受容体が継続的に活性化される病態に対し、現在市販されているARBと比較して、より有用な治療薬になるだろう」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)

【訂正】
 11月22日に以下のように訂正しました。
 本文第5段落に、「Val108、Ser109、Phe182、Gln257、Asn295と相互作用して」とありましたが、Phe182は無関係で、正しくは、「Val108、Ser109、Gln257、Asn295と相互作用して」でした。お詫びして訂正します。