山梨大学の斉藤幸生氏

 冠動脈疾患(CAD)や慢性腎臓病(CKD)を有する患者では、レムナントリポ蛋白が心血管イベントの強力な予測因子になる可能性が新たに指摘された。フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、山梨大学の斉藤幸生氏らが発表した。

 CKD症例では、冠動脈イベントのリスクとなるトリグリセライド値が高い。トリグリセライドに富むリポ蛋白は多彩に存在するが、それらの中でどのリポ蛋白が冠動脈リスクになるのかは未だ明らかではない。今回、斉藤氏らは、レムナントリポ蛋白がCAD患者やCKD患者における冠動脈イベントの予測因子となる可能性についての検討結果を報告した。

 対象は、山梨県において冠動脈インターベンションを施行した患者を前向きに連続して登録している多施設共同研究FUJISUN registry(2008年5月開始)から、連続で抽出したCAD/CKD患者229例。CKDは、糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m2未満と定義した。レムナントリポ蛋白の量的評価では、血漿中のレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)を免疫分離法で定量して指標とした。

 対象のうち、46例が冠動脈イベントの既往を有し、183例はイベントを経験していなかった。両群のベースラインの患者背景では、既往あり群のBMIは24.8±3.3kg/m2で、既往なし群の23.4±3.8kg/m2に比べて有意に高く(P<0.05)、糖尿病罹患率(68% 対 41%)も有意に高かった(P<0.05)。

 また、既往あり群ではトリグリセライド値(142±49mg/dL 対 124±54mg/dL)、BNP(287±326pg/mL 対 238±296pg/mL)、血清クレアチニン値(2.98±3.00mg/dL 対 1.69±1.92mg/dL)、RLP-C値(6.2±3.8mg/dL 対 4.3±1.8mg/dL)が有意に高かった(P<0.05)。一方で、既往あり群のHDL-C値(39±10mg/dL 対 43±10mg/dL)、クレアチニンクリアランス(33±20mL/分/1.73m2 対 42±15 mL/分/1.73m2)は有意に低かったP<0.05)。

 試験開始後、心臓死、非致死性心筋梗塞、冠動脈血管再建術を要する不安定狭心症、心不全の発症を記録した。対象をRLP-C値5.7mg/dL以上74例と5.7mg/dL未満152例に分けて解析すると、18カ月の時点でRLP-C高値群では28例(38%)でいずれかのイベントが生じ、RLP-C低値群の18例(12%)に比べて有意に多かった(P<0.0001)。内訳は、心臓死5例 対 0例、心筋梗塞4例 対 2例、不安定狭心症15例 対 14例、心不全4例 対 2例だった。

 Kaplan-Meier曲線による4つのイベント非発症率の解析でも、RLP-C高値群は低値群に比べ、有意に低かった(P<0.01)。さらに、段階的多変量Cox比例ハザードモデルによる解析では、RLP-C高値が冠動脈イベントの予測因子であることが示唆された(ハザード比1.8、95%信頼区間:1.3-6.9、P<0.01)。

 ROC曲線の解析でも、既にリスクとされている加齢、男性、喫煙、糖尿病、LDL-C高値、HDL-C低値、収縮期血圧高値にRLP-C高値が加わると、ROC曲線化面積が0.63から0.76に有意に拡大し、予測値が高まることが示された(P<0.05)。

 斉藤氏は以上の結果を踏まえ、「RLP-Cの定量は、CADおよびCKDの患者の冠動脈イベントリスクの層別化にも活用できると考えられる。今後は、実臨床にRLP-Cの評価をより積極的に取り入れ、エビデンスを蓄積し、パラメータとしての信頼性を確立していきたい」と、さらに一歩踏み込んだ研究を見据え、意欲を示した。

(日経メディカル別冊編集)