横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センターの岡田興造氏

 スタチンでLDL-C管理目標値を達成できない冠動脈疾患(CHD)患者に対し、エゼチミブを併用することで、スタチンによるエスケープ現象を抑制しつつ、中長期的に安定したLDL-C管理を提供しうることが、エゼチミブ+スタチンとスタチン倍量とを比較した国内の単施設前向き無作為化試験で示された。フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センターの岡田興造氏が報告した。

 スタチンはLDL-C低下療法において有用な薬剤だが、通常用量で管理目標値が達成できない場合、スタチンを倍量にしても、LDL-C低下の上乗せ効果は6%程度に留まることが知られている。実際、実地臨床におけるハイリスク例や2次予防例の管理目標値到達率は低く、特にCHD既往患者では20%に満たないことが示されている。また、スタチンの高用量投与では副作用の増加も懸念される。

 こうした中、小腸からのコレステロール吸収を阻害する小腸コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブは、コレステロールの合成を阻害するスタチンと併用することで相補的に作用し、効果的にLDL-Cを低下させることが報告されている。

 岡田氏らは既に、12週間のLDL-C低下効果を、エゼチミブ+スタチンとスタチン倍量とで比較した試験を行い、併用群におけるLDL-C低下効果がスタチン倍量と同等以上だったことを報告している。今回、同試験のフォローアップ期間を52週まで延長、特にスタチンのエスケープ現象に着目して、併用療法のLDL-C低下効果を中長期的に検討した。

 対象は、日本における標準的な初期投与量のストロングスタチン(アトロバスタチン10mg/日、またはロスバスタチン2.5mg/日)を4週間にわたって内服しているにもかかわらず、LDL-Cが管理目標値に到達しなかったCHD患者で、エゼチミブ10mg/日を併用するスタチン・エゼチミブ併用群と、現行のスタチンを倍量とするスタチン倍量群に無作為割り付けし、52週間追跡して中長期的LDL-C低下効果を比較した。LDL-C管理目標値は、今年改訂された欧州心臓病学会(ESC)/欧州動脈硬化学会(EAS)合同脂質異常症管理ガイドラインに準じて70mg/dL未満とした。

 200人を登録し、副作用によって脱落した各群3人と、プロトコール逸脱で52週まで追跡できなかった患者を除いたエゼチミブ併用群75人、スタチン倍量群71人について解析した。

 試験開始時における患者背景については両群で差がなかった。またスタチン別の4群で比較しても患者背景に差がなかったことから、解析はエゼチミブ併用群とスタチン倍量群の2群間比較とした。

 LDL-Cは、12週までは両群ともに良好な低下を示したが、その効果はエゼチミブ併用群の方が大きかった。12週以降、エゼチミブ併用群では良好なLDL-Cのコントロールが維持された(試験開始時111.8mg/dL→12週83.3mg/dL→52週83.9mg/dL)が、スタチン倍量群では12週後以降、わずかながら有意なLDL-C増加を認めた(試験開始時108.8mg/dL→12週92.1mg/dL→52週96.9mg/dL)。

 変化率でみると、エゼチミブ併用群では12週と52週のLDL-C低下率に差を認めなかった(−24.18% 対 −23.28%)が、スタチン倍量群では12週と比べて52週のLDL-C低下効果が有意に減弱していた(−14.5% 対 −8.8%、P<0.01)。HDL-Cと中性脂肪の変化は、両群間で有意な差はなかった。

 コレステロール吸収/合成マーカーの比は、エゼチミブ併用群では試験開始時から12週まで減少し、その後維持されたのに対して、スタチン倍量群では上昇し続けた。また、LDL-C値が薬剤介入前の値にまで増加してしまったリバウンド症例の比率は、エゼチミブ併用群では9.3%だったのに対して、スタチン倍量群では32.4%と有意に多かった(P<0.01)。なお、両群間で、試験期間中の副作用には差を認めなかった。

 これらの結果から岡田氏は、「スタチンでLDL-Cの管理目標値を達成できない冠動脈疾患患者においては、エゼチミブを併用することで、スタチンによって引き起こされるエスケープ現象を抑制でき、中長期的に安定したLDL-C管理を実現できることが分かった」と結論した。

 また同氏はエスケープ現象について、「LDL-C低下という生体への侵襲に対するフィードバック機構として、HMG-CoA還元酵素活性の亢進や、LDL-C受容体の分解酵素であるPCSK9のアップレギュレーションが関与している可能性がある」と考察し、今後さらに分子的機序の解明を行っていきたいと述べた。

(日経メディカル別冊編集)