米国Cardiovascular Cell Therapy Research NetworkのJay H Traverse氏

 LateTIME試験は急性心筋梗塞に対するステント留置後に、自家骨髄由来単核球(BMC)を従来の試験に比べて遅れて冠動脈内投与したときの安全性と有効性を検討した試験である。今回、米国Cardiovascular Cell Therapy Research Network/University of MinnesotaのJay H Traverse氏は同試験の結果について、フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術会議(AHA2011)において紹介し、ステント留置から2〜3週間後の自家BMC冠動脈内投与は安全だが、心機能は改善しなかったと報告した。

 急性心筋梗塞後にBMCを冠動脈内投与する最適なタイミングは明らかではない。多くの試験ではステント留置から7日間以内に投与されているが、本試験ではステント留置から2〜3週間後に自家BMCを冠動脈内投与したときの安全性、左室機能に及ぼす影響を検討した。

 対象は初回の重度心筋梗塞を発症し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行ってステントを留置し再灌流した症例で、左室駆出率が45%以下の87例。自家BMC群(58例)あるいはプラセボ群(29例)に2対1で無作為に割り付けた。BMCの採取はステント留置から2〜3週間後に近い時点で行っている。主要エンドポイントは、6カ月後にMRIで評価した左室機能(左室駆出率、梗塞領域の壁運動能)の変化量とし、副次エンドポイントとして梗塞サイズと左室容積を評価した。

 BMC群とプラセボ群の背景には違いはなく、狭窄部位(左下行枝が91% vs. 93%)、薬剤溶出性ステントの使用率(78% vs. 69%)にも相違は認められなかった。

 急性心筋梗塞の治療状況に関しては、胸痛発症から救命救急室搬入までの時間(約2時間)、胸痛発症からPCI施行までの時間(3時間強)、搬入からバルーン処置までの時間(2時間弱)、PCI施行から試験薬投与までの期間(約17日)に、いずれも2群間で違いはなかった。

 採取したBMCは、自動プロセシング装置を用いて調整した。BMC群で冠動脈内投与したBMCは有核細胞を150×106含み、バイアビリティは中央値99.0%、CD34+細胞を2.6%、CD133+細胞を1.2%含み、コロニー形成単位は139、血管内皮への遊走細胞数は184であった。

 左室駆出率はベースラインから6カ月後に、BMC群では48.7%から49.2%に、プラセボ群では45.3%から48.8%に変化したが、両群の変化量に有意な差は認められなかった。また、梗塞領域および梗塞境界領域の壁運動能の変化量にも群間差は認められなかった。さらに、ベースラインから6カ月後の梗塞サイズ、左室の拡張終期容積係数、左室の収縮終期容積係数の変化量にも群間に有意差は認められなかった。

 また、6カ月までに臨床/有害イベントとして、BMC群では再梗塞が1例、血行再建術再施行が1例、心不全による入院が1例、プラセボ群では死亡が1例、血行再建術再施行が3例、除細動器の植え込みが2例で発生した。

 以上の検討からTraverse氏は、「中等度から重度の急性心筋梗塞後に対するステント留置から2〜3週間後に自家BMCを冠動脈内投与しても安全性には問題はなかったが、6カ月の心MRI所見に基づく左室および梗塞部位の機能には改善は認められなかった」と結論した。

 ディスカッサントであるドイツUniversity Medical Center Hamburg-EppendorfのThomas Eschenhagen氏は、本試験で左室機能が改善しなかった理由として、ステント留置から2〜3週間後が適切なタイミングかどうか不明、投与したBMCの有効性を動物モデルで確認していない、対象例数が少ない、投与したBMC量が足りなかった可能性などを挙げた。

(日経メディカル別冊編集)