国立循環器病研究センターの西村邦宏氏

 消防庁がまとめている救急蘇生統計ウツタイン統計)の解析から、院外心停止(sudden cardiac arrest)の発生には1月をピークとする月間変動が見られることが明らかになった。11月12日から米国フロリダ州オーランドで開催されていた第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、国立循環器病研究センターの西村邦宏氏らが発表した。

 救急蘇生統計では、日本全国で救急蘇生が試みられた院外心停止患者をウツタイン様式に基づきプロスペクティブに登録している。2005年1月〜2008年1月の4年間で、18歳以上の19万6032例が心疾患に関連した院外心停止で救急搬送された。

 人口1万人・年あたりの院外心停止の発生率を月別に見ると、発生率は1月に最も高く、6〜7月に最も低くなっていた。6月を基準とすると、1月の院外心停止発生率は1.61倍に上った。また年齢別にみると、65歳未満の1.23倍に対して65歳以上では1.85倍と、より高率になった。

 院外心停止例の平均年齢は、発生率の高い冬季で高くなっていた。月ごとの院外心停止発生率と月ごとの院外心停止例の平均年齢とが同様な変動パターンを示したことから、発生率の高い月には高齢者が多く院外心停止を起こしていると考えられた。

 わが国は、地域によって気温差が大きい。都道府県別の解析では、月の平均気温(P<0.0001)と平均最低気温(P<0.001)が低い地域ほど院外心停止発生率が有意に高かったが、年齢、性別、最低気温で補正後も、月ごとの院外心停止発生率の分布は変わらなかった。

 なお、心拍動の再開率は冬季に比べて7〜8月の夏季で高く、院外心停止発生率と逆のトレンドになっていた。これは、夏季の院外心停止発生患者の平均年齢が若いことが原因の1つと考えられた。

 これまで、院外心停止発生率の季節変動については報告されていたが、月ごとの変動を19万例という大規模集団を対象に、かつプロスペクティブに検討した調査は本報告が初めてという。気温と院外心停止の関連性を国単位の規模で検討した研究は、世界的にも例がない。

 西村氏は、年齢、性別、気温で補正した後も院外心停止の月別傾向は変わらなかったことから、そこには多様な要因の関与が考えられるとした上で、「わが国の院外突然心停止は1月がピークで、特に冬季あるいは気温が低い地域では高齢者の突然心停止発生率が高まることが分かった。高齢者に対して適切な室温の維持や衣服の調節が、その対策として考えられるだろう」と話している。

(日経メディカル別冊編集)