University Hospital of FrankfurtのDavid M. Leistner氏

 REPAIR-AMI試験は急性心筋梗塞患者に対する骨髄由来単核球(BMC)冠動脈内投与が心機能や臨床転帰に及ぼす影響をプラセボと比較検討したランダム化試験で、4カ月後の検討では左室駆出率の改善がこれまでに報告されている。今回、REPAIR-AMI試験の登録例を長期に追跡した結果、BMC冠動脈内投与によって得られるベネフィットは5年間持続することが示された。11月12日からフロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会学術会議(AHA2011)でドイツUniversity Hospital of FrankfurtのDavid M. Leistner氏が報告した。

 本試験の対象は、PCIを施行してステント留置に成功したST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者204例。冠動脈内にプラセボを投与する群(103例)あるいはBMCを投与する群(101例)にランダムに割り付け、5年後の臨床転帰を比較検討した。また、試験開始時および冠動脈内投与4カ月後、5年後のMRI所見が得られた27例(プラセボ群10例、BMC群17例)ではMRI所見から評価した心機能を比較した。患者の骨髄より採取した単核球は、細胞加工施設で培養された後、BMC群には割り当てられた患者には培養した単核球が冠動脈に投与された。

 患者背景は、平均55〜57歳で、男性比率が82%、高血圧例、高脂血症例が5〜6割、糖尿病例が1〜2割で、喫煙者および禁煙者が7割、1枝病変患者が6割を占めていた。プラセボ群、BMC群の間で患者背景に差は認められなかった。

 5年間の追跡期間に、プラセボ群では15例、BMC群では7例が死亡したが、2群間の差は統計学的には有意ではなかった(p=0.09)。死因別に比較すると、心臓突然死はともに3例で差は見られなかった。慢性心不全関連死がプラセボ群3例、BMC群0例だったが、統計学的には有意ではなかった(p=0.08)。脳卒中死もともに1例ずつ、癌死や死因不明例も2群間で差はなかった。

 両群の臨床転帰を比較すると、死亡、心臓死、心筋梗塞発症、心不全による入院や死亡のリスクは、プラセボ群に比べてMBC群で抑制される傾向があり、死亡・心筋梗塞・再血行再建術をすべて合わせた複合エンドポイントとして評価すると、BMC群の転帰は有意に良好であった(p=0.03)。しかし、死亡・心不全による入院の複合、死亡・心筋梗塞・心不全による入院の複合エンドポイントで評価した場合には統計学的に有意な差とはならなかった。

 死亡の予測因子を検討したところ、Cadillacスコア、アルドステロン拮抗薬による治療、4カ月後の収縮終期容量の増加、BMC冠動脈内投与については有意な予測因子とはならなかった。4カ月後の左室駆出率の増加は有意な予後改善の予測因子であった。

 MRI所見から評価した5年後の左室駆出率は、プラセボ群では3.3%低下、BMC群では5.9%上昇し、群間の変化量には有意差が認められた(p=0.02)。また、MRI所見から梗塞部位の左室壁厚変化率を調べたところ、プラセボ群では変化しなかったのに対して、BMC群では改善が見られ、4カ月後、5年後には群間差は有意となった。

 以上の結果からLeistner氏は、「急性心筋梗塞患者にBMCを冠動脈内投与することによって得られる臨床的ベネフィットは5年後まで続く」と結論し、その理由として「BMC投与によって左室駆出率の改善は5年後にも見られるが、それは梗塞部位の収縮機能が回復したためだ」と続けた。なお本試験の結果は、急性心筋梗塞再灌流後にBMCを冠動脈内投与することで、全死亡リスクが低下するかどうかを検討するBAMI試験を実施する理論的根拠となった。

 ディスカッサントである米国Northwestern UniversityのRobert Bonow氏は、「臨床転帰の改善は一部の複合エンドポイントでしか認められなかったこと、MRI所見に基づく心機能評価は症例数が少なかったことがREPAIR-AMI試験の弱点だ」としながらも、急性心筋梗塞後の幹細胞移植は有望であるとし、「幹細胞を介した心修復のメカニズムを解明し、その知見に基づいてランダム化試験を実施する必要がある」とコメントした。

(日経メディカル別冊編集)