ブラジル・サンパウロHeart InstituteのAntonio E Pesaro氏

 冠動脈疾患患者に対するLDL低下療法には、脂質低下を超えた“pleiotropic”な作用があることが知られている。しかし、治療戦略の違いによるpleiotropic作用の違いについてはほとんど検討されていない。ブラジル・サンパウロHeart InstituteのAntonio E Pesaro氏(写真)らは、エゼチミブ+常用量のスタチン併用療法と高用量スタチン単剤療法が冠動脈疾患患者の血小板凝集能と炎症、末梢血中の内皮前駆細胞(EPC)に及ぼす影響を無作為化比較試験により検討した。その結果、エゼチミブ+常用量のスタチンにより血小板凝集抑制効果を認め、シカゴで11月17日まで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)にて報告した。

 対象は、シンバスタチン20mg/日による治療を4週間以上継続中で、LDLコレステロール(LDL-C)が 70〜160mg/dLかつ冠動脈疾患が安定した状態にある患者83人(平均年齢63歳、男性48人)。Pesaro氏らは、これらの患者を、エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg群(エゼチミブ併用群、n=42)もしくはシンバスタチン80mg群(スタチン増量群、n=41)の2群に無作為割付けして6週間の投与を行い、治療前後の血中LDL-C、CRP、酸化LDL、可溶性CD40リガンド(sCD40L)、MCP-1、IL-6濃度を比較した。また、Platelet Function Analizer(PFA)-100(Siemens社製)を用いて血小板凝集能を測定するとともに、EPCのフローサイトメトリー解析を行った。

 その結果、治療後のLDL-C濃度は、両群ともに治療前より有意に低下し(p<0.01)、両群の低下度は同等だった(p=0.46)。また、酸化LDL濃度も両群とも有意(p<0.01)かつ同様に低下した。しかし、酸化LDL以外の炎症指標(CRP、sCD40L、MCP-1、IL-6)の有意な変化は認められず、EPCプロファイルにも変化は認められなかった。

 血小板凝集能に関してPFA-100の測定値は、スタチン増量群では有意な変化が認められなかったのに対し、エゼチミブ併用群の測定値は治療前より25%以上上昇し(p<0.01)、スタチン増量群との間に有意な差を認めた(p=0.02)。

 以上の結果から、常用量のスタチンとエゼチミブの併用療法は、4倍量のスタチンを単剤で用いた場合とLDL低下作用や抗炎症作用は同等である一方、血小板凝集抑制作用は高用量スタチン療法を凌ぐメリットがある可能性が示された。

 ただし、本検討は83人という少数例による検討で、倫理面から前治療(シンバスタチン20mg/日)からの休薬期間を設けていないため、登録時からの変化が過小評価された可能性が強いことなどが今後の課題として挙げられた。

(日経メディカル別冊編集部)