カナダ・ラヴァル大学のPatrick Couture氏

 スタチンHMG-CoA還元酵素阻害作用は、肝臓のコレステロール合成を抑制する一方、小腸からのコレステロール吸収を亢進することが報告されているが、ヒトを対象にその機序を検討した報告はなかった。カナダ・ラヴァル大学のPatrick Couture氏(写真)らは、腸管内におけるコレステロール代謝因子の亢進・抑制を介して、コレステロール吸収が調節されることを見い出し、その成果をシカゴにて11月17日まで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で報告した。

 対象は18〜60歳の男性で、喫煙習慣がなく、BMI 20〜30kg/m2、LDLコレステロール(LDL-C)値 140〜240mg/dL、中性脂肪値が<220mg/dL、HDLコレステロール(HDL-C)値 34〜61mg/dLを満たし、肝・腎障害、血液凝固障害のない脂質異常症患者23人。アトルバスタチン40mg/日(アトルバスタチン群)あるいはプラセボ(プラセボ群)をそれぞれ12週間ずつ投与する二重盲検無作為化クロスオーバー試験を実施した。各治療期の終了時に十二指腸生検を実施し、リポ蛋白におけるコレステロール代謝に関わる主要遺伝子の発現量を測定した。

 スクリーニング時の患者背景は、平均年齢38.1歳、BMI 29.0 kg/m2、ウエスト周囲径100.1cm、総コレステロール値(TC)が232mg/dL、TG値143mg/dL、LDL-C値159mg/dL、HDL-C値45mg/dLだった。

 各12週後におけるTC値は、プラセボ群に比べてアトルバスタチン群では、37%(p<0.0001)低下、LDL-C値は50%(p<0.0001)、TG値は29%(p=0.0004)、それぞれ有意に低下したが、HDL-Cは両群で同等だった。外因性脂質パラメータのapoB-48は、24%(p=0.04)低下していた。また、プラセボ群に比べてアトルバスタチン群では、コレステロール合成マーカーのラトステロール値は76%有意(p<0.0001)に低下し、吸収マーカーのカンペステロール値は65%(p<0.0001)、βシトステロールは70%(p<0.0001)、それぞれ有意に上昇した。

 コレステロール代謝関連遺伝子については、アトルバスタチン群でHMG-CoA還元酵素mRNA発現量は59%(p<0.0001)、LDL受容体mRNA発現量は52%(p=0.0007)、コレステロールの恒常性維持に関与するPCSK9のmRNA発現量 は187%(p<0.0001)有意に上昇した。また、転写因子のSREBP-2 mRNA発現量は44%(p<0.0001)、HNF-4α mRNA発現量は13%(p=0.02)、また、コレステロール輸送体Niemann-Pick C1-like-1 (NPC1L1) 蛋白のmRNA発現量は15%(p=0.03)、それぞれ有意に上昇した。

 また、細胞外へのコレステロール排泄を担うABCG5のmRNA発現量は、アトルバスタチン群で16%有意(p=0.04)に低下しており、ABCG8のmRNA発現量も15%(p=0.06)低下傾向にあった。

 なお、転写因子のSREBP-2およびHNF-4αのmRNA発現量とHMG-CoA還元酵素、LDL受容体、NPC1L1のmRNA発現量には有意な正の相関が認められた。

 以上の結果からCouture氏は、「ヒトにおいてもアトルバスタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害することで細胞内のコレステロールを枯渇化し、小腸内リポ蛋白代謝に関わる遺伝子の発現を調節している」と結論した。その機序として、「SREBP-2およびHNF-4αの増強を介したNPC1L1発現亢進、およびABCG5/8発現抑制を媒介に、コレステロール吸収を増大させる可能性がある」と説明した。

(日経メディカル別冊編集部)