横浜市立大学附属市民総合医療センターの岡田興造氏

 コレステロールの恒常性は、コレステロールの吸収と合成のバランスによって調節されているが、吸収もしくは合成の亢進がある患者では、スタチンコレステロール吸収阻害薬への応答性が異なることが報告されている。しかし、投与前の吸収・合成のバイオマーカー値から治療効果がどの程度予測できるかは検討されていない。横浜市立大学附属市民総合医療センター岡田興造氏(写真)らは、冠動脈疾患患者を対象に、コレステロール吸収・合成マーカー値から、エゼチミブ/スタチン併用療法、スタチン単独療法のLDLコレステロール(LDL-C)低下効果を予測できることを明らかにし、その結果をシカゴにて11月17日まで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で報告した。

 対象は、アトルバスタチン10mgあるいはロスバスタチン2.5mgを4週間以上投与し、LDL-C管理目標値(100mg/dL未満)に到達しなかった冠動脈疾患患者165人。各スタチンにエゼチミブ10mgを追加する群(92人)、あるいは各スタチンを2倍に増量する群(73人)の2群に無作為に割り付け、それぞれ12週間投与する多施設前向き無作為化試験を行った。登録時および12週後の血清脂質プロファイル、吸収マーカー値(カンペステロール)、合成マーカー値(ラトステロール)を測定し、その変化を検討した。

 登録時におけるエゼチミブ併用群とスタチン増量群の年齢、男女比、BMI、合併症、家族歴、喫煙率、および血清脂質プロファイル、コレステロール吸収・合成マーカーは、両群間で差はなかった。

 12週後のLDL-C値は、エゼチミブ併用群では120mg/dLから90mg/dLに低下し、スタチン増量群では117mg/dLから98mg/dLに低下したが、低下率はエゼチミブ併用群で有意に大きかった(p<0.01)。また、HDLコレステロール(HDL-C)値、トリグリセライド(TG)値の改善率も、エゼチミブ併用群の方が有意に良好だった(各p<0.05、p<0.01)。

 12週後のコレステロール吸収・合成マーカーをみると、吸収マーカー値はエゼチミブ併用群で有意に低下、スタチン増量群では有意に上昇した(ともにp<0.01)。一方、合成マーカー値はエゼチミブ併用群で有意に上昇(p<0.01)、スタチン増量群で有意に低下した(p<0.05)。

 エゼチミブ併用群におけるLDL-C低下量は、登録時の吸収マーカー高値群(n=53)では33.5mg/dL、低値群(n=39)では25 mg/dLと、吸収亢進傾向にある患者群で有意に大きかった(p<0.01)。スタチン増量群では、登録時の合成マーカー値によってLDL-C低下量に違いは認められなかった。

 次に、登録時のコレステロール吸収・合成マーカー中央値から、すべての対象を高吸収/低合成群(A群)、高吸収/高合成群(B群)、低吸収/低合成群(C群)、低吸収/高合成群(D群)の4群に分け、LDL-C低下量を比較検討した。その結果、A群、B群、C群におけるエゼチミブ併用患者のLDL-C低下量はスタチン増量患者に比べて有意に大きかった(p<0.01)が、D群では両群の患者のLDL-C低下量に違いは認められなかった。

 以上の結果から岡田氏は、冠動脈疾患患者では、治療前のコレステロール吸収・合成マーカー測定は、エゼチミブ/スタチン併用療法、スタチン単独療法のLDL-C低下効果を予測する上で有用だと結論した。

(日経メディカル別冊編集部)