カナダ・トロント大学のAlexander G Logan氏

 携帯電話を使ったテレモニタリングシステムを導入することによって、管理不良高血圧の糖尿病患者で血圧コントロールを改善できることが報告された。カナダ・トロント大学のAlexander G Logan氏(写真)らが、11月17日までシカゴで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で発表した。

 演者らは、携帯電話を利用した全自動テレモニタリングシステムを考案した。患者が自ら測定した血圧データをサーバーに送信し、蓄積するのが基本。サーバーからは、データを評価したメッセージが送られ、また、血圧データの送信を忘れていた場合は、測定を促すメールが届く仕組み。蓄積されたデータは、たとえば血圧値が高いなど何らかの異常が現れた場合には、かかりつけ医や専門医へ緊急連絡が送られる機能も併せ持つ。演者らはこのシステムの有用性を評価するため、比較検討試験を行った。

 対象は、管理不良収縮期高血圧の成人糖尿病患者。携帯電話を使ったテレモニタリングシステムを使う携帯電話群(n=55)と、対照として自宅で標準的な方法で血圧をモニターする標準群(n=55)にランダムに割り振った。

 まず、全被験者に有効な自宅血圧測定装置を提供し、使い方を指導した。携帯電話群には、市販されているBluetooth対応の自宅血圧モニターからアプリケーションサーバーへ数値を確実に自動送信するよう、前もってプログラムされた携帯電話も提供された。同時に、全患者は、プライマリケア医師による診察を受けた。

 登録時から試験開始後12カ月までの血圧変化を24時間外来血圧モニタリングにより記録し、2群間の平均差異を主たる評価項目とした。

 患者背景は、平均年齢は標準群63.1±9.0歳、携帯電話群62.7±7.8歳、男性の割合は標準群62%、携帯電話群49%、平均BMIは標準群29.8±5.5kg/ma2、携帯電話群31.9±7.9kg/ma2、平均収縮期血圧は標準群142.6±10.2mmHg、携帯電話群142.7±10.9mmHg、平均拡張期血圧は標準群77.9±9.2mmHg、携帯電話群76.3±10.5mmHg、平均HbA1c値は標準群7.5±1.2、携帯電話群7.4±1.5などだった。男性の割合やBMIなどで、2群間で若干の差が見られたが、収縮期血圧や拡張期血圧に群間差はなかった。

 12カ月後、収縮期血圧と拡張期血圧の変動における2群間の平均差異は、それぞれ6.76±2.35mmHg(p=0.005)と3.59±1.29mmHg(p=0.006)で、いずれも携帯電話群の方が有意に減少していた。

 この血圧の減少は、試験開始から7日間の自己測定血圧でも現れていた。7日間の収縮期血圧と拡張期血圧の変動における2群間の平均差異は、それぞれ9.00±2.36mmHg(p=0.0002)と3.95±1.33mmHg(p=0.004)で、いずれも携帯電話群の方が有意に減少していた。

 また、12カ月後の日中の血圧が130/80mmHg未満の血圧コントロールが実現できた患者の割合は、携帯電話群で有意に多いという結果だった(37.0%対14.2%、p<0.02)。なお、降圧薬の服用数、医療機関の受診回数などに、2群間で差は見られなかった。

 これらの結果から演者らは、「高血圧患者を自分自身のケアに積極的に関わらせ、医師とのコミュニケーションを高めるよう設計された携帯電話利用のテレモニタリングシステムは、管理不良高血圧の糖尿病患者の血圧コントロールを有意に改善した」と結論した。

(日経メディカル別冊編集部)