フランスNancy University Hospital CenterのFaiez Zannad氏

 これまでに、抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンを用いたRALES試験、エプレレノンを用いたEPHESUS試験から、心不全に対する抗アルドステロン薬の有用性が確認されている。しかし、両試験はいずれも重症心不全例が対象で、軽症例に対する抗アルドステロン薬の有用性についてはエビデンスがない。そこで、EMPHASIS-HF試験グループのFaiez Zannad氏(フランスNancy University Hospital Center)らは、軽症心不全患者を対象に、心不全の標準治療にエプレレノンを追加投与した場合の効果について検討し、その結果をシカゴで11月13日から17日まで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で報告した。

 EMPHASIS-HF試験は、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照並行群間試験。対象は、55歳以上、左室駆出率(EF)≦30%で、心不全の標準治療を受けている身体機能分類(NYHA) クラスIIの慢性収縮期心不全患者。

 対象患者はエプレレノン群(25mg/日)あるいはプラセボ群にランダムに割り付けられた。また、4週時点で血清カリウム値に基づきエプレレノンは50mg/日への増量が認められた。

 主要評価項目は、心血管死あるいは心不全による入院の複合エンドポイントとした。

 登録された症例は2737例で、エプレレノン群1364例、プラセボ群1373例だった。当初、本試験の組み入れ予定症例数は3100例だったが、2010年5月の中間解析において、主要有効性評価項目が早期に達成されたことが確認され、被験者登録が早期に終了した経緯がある。

 登録時の患者背景に群間差は認められなかった。

 試験の結果、中央値21カ月の追跡で、心血管死あるいは心不全による入院の累積発生率は、エプレレノン群18.3%、プラセボ群25.9%で、エプレレノン群はプラセボ群に対して37%有意に低下した(ハザード比0.63、95%信頼区間;0.54-0.74、p<0.0001)。

 また、エプレレノン群はプラセボ群に比べて、全死亡リスクが24%(ハザード比0.76、95%信頼区間;0.62-0.93、p=0.008)、全入院リスクが23%(ハザード比0.77、95%信頼区間;0.67-0.88、p<0.0001)、心不全による入院リスクが42%(ハザード比0.58、95%信頼区間;0.47-0.70、p<0.0001)、それぞれ有意に低下した。

 患者・年当たりの治療必要例数(NNT)を検討したところ、主要評価項目達成のNNTは19例、死亡遅延は51例であった。

 有害事象に関しては、エプレレノン群における高K血症の発生率がプラセボ群に比べて有意に高かったが(8% 対 3.7%、p<0.001)、高K血症発生に起因して試験を中止した割合には群間差は認められなかった(1.1% 対 0.9%、p=0.57)。

 これらの結果からZannad氏は、心不全の標準治療へのエプレレノンの追加投与は忍容性が高く、生存期間延長および心不全による入院回避が期待できることから、軽症慢性収縮期心不全患者に対する薬物治療として推奨されると結論した。

(日経メディカル別冊編集部)