順天堂大学循環器内科の葛西隆敏氏

 低比重リポ蛋白LDLコレステロール値をコントロールしても、低肥満や高血圧、糖尿病、高トリグリセリド値、高比重リポ蛋白(HDL)値が低い、といったリスク因子が多い程、心血管イベントリスクは増大するようだ。同リスク因子が1つでもあれば3年間の心血管イベントリスクは1.7倍に、4因子では同リスクが2.8倍に、それぞれ増大するという。これは、順天堂大学循環器内科葛西隆敏氏(写真)らが、日本国内の診療所など約800の医療機関を通じ、4000人超の患者について調べたHeart Care Network研究の成果で、11月13日から17日までシカゴで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で発表した。

 同氏らは、2000〜2005年にかけて、日本国内62地域、799カ所の医療機関を通じ、1万5055人の患者について試験を行った。3年間の追跡期間中、2回以上、調査対象となる検査結果が全て得られた1万291人のうち、目標LDLコレステロール値を達成した4033人について分析を行った。

 目標LDL-C値は、心筋梗塞歴がある人は100mg/dL、糖尿病は120mg/dL、それ以外のリスク因子の数がゼロでは160mg/dL、1〜2は140mg/dL、3以上は120mg/dLだった。

 リスク因子のカットオフ値は、肥満がBMI25kg/m2、高血圧は、糖尿病または心筋梗塞歴のある人は130/80mmHg、60歳以上では140/90mmHg、それ以外は130/85mmHgとした。トリグリセリド値は150mg/dL、HDLコレステロール値は40mg/dL、HbA1c値は糖尿病患者が6.5%、それ以外は5.8%とした。

 被験者のうち、同リスク因子が全くない人は90人、1つが788人、2因子が1512人、3因子が1129人、4因子が438人、5因子全てがある人は76人だった。

 3年間の追跡期間中に発生した血管疾患イベントは166件だった。LDL-C以外のリスク因子の数でイベントリスクを分析すると、同因子が全くない人に比べ、リスクが1つある人はハザード比が1.73、2つは1.81、3つが2.04、4つが2.84、5つ全てがあると2.97と増大した(傾向p=0.027)。

 葛西氏はこの結果について、「リスク因子の種類ではなく、数による結果なので、日常診療の中で患者指導にもつなげやすいのではないか」としている。また、今回の患者データは、大学病院などの研究機関の専門医を通じたものではなく、「地域の診療所など、一般の医師が診察する患者データである点も貴重だ」と語った。

(日経メディカル別冊編集部)