カナダ・ラヴァル大学のAndre J Tremblay氏

 2型糖尿病患者では、小腸と肝臓の双方における中性脂肪(TG)に富んだリポ蛋白の合成が亢進、それが蓄積し、動脈硬化が進行すると考えられている。インクレチン(GLP-1およびGIP)には腸管でのTG吸収やリポ蛋白産生の抑制、カイロミクロンクリアランスの促進などの作用もあることが動物実験から示唆されている。カナダ・ラヴァル大学Andre J Tremblay氏(写真)らは、シタグリプチンのインクレチン増強作用は、高TGの改善にも有用なのではないかと推測し、脂質代謝への影響を検討するプラセボ対照クロスオーバー試験を実施した。その結果、食後のリポ蛋白値の低下が認められた。シカゴで11月13日から17日まで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で報告した。

 対象は、3カ月以上継続してメトフォルミンを服用している2型糖尿病患者36人。30人が男性、6人が閉経後の女性で、平均年齢は58.1歳、平均BMIは30.7kg/m2だった。Tremblay氏らは、これらの患者を2群に分け、4週間のwashout期間を挟んでDPP-4阻害薬シタグリプチン100mg/日とプラセボをそれぞれ6週間ずつ投与する無作為化二重盲検クロスオーバー試験を行った。

 各試験薬の投与期間とwashout期間の終了時に、体表面積当たり60gの経口脂質負荷試験を行い、脂質および糖代謝パラメータを2時間ごとに測定、負荷後8時間までのAUCを算出することで、食後高血糖と食後高脂血症に対する影響を評価した。また、空腹時の糖・脂質代謝パラメータの変化も併せて評価した。

 その結果、各6週後の空腹時の血糖値とHbA1c値は、シタグリプチン投与がプラセボ投与に比べ有意に低下していた(それぞれ12.9%;p<0.0001、4.3%;p=0.0009)。同様にインクレチン値は、GLP-1で54.3%(p=0.04)、GIPは58.0%(p<0.0001)と有意に増加していた。また、インスリン抵抗性指数(HOMA index)とβ細胞機能(Insulinogenic Index)にも有意な改善が認められた(それぞれ-14.6%;p=0.03、+32.3%;p=0.01)。

 また、食後血糖はシタグリプチン投与で有意に低下(9.4%;p<0.0001)、インクレチンは、GLP-1が67.8%、GIPが67.3%と有意に増加していた(ともにp<0.0001)。

 同様に食後の脂質パラメータは、apoB-100(内因性apoB)とapoB-48(外因性apoB)を合わせた総apoBが5.1%(p=0.002)、apoB-48のみでは7.8%(p=0.03)減少しており、これに伴いTGが9.4%(p=0.006)、VLDL-コレステロールが9.3%(p=0.001)減少していた。また、遊離脂肪酸は7.6%(p=0.005)減少していた。

 これらの結果から、2型糖尿病患者に対する6週間のシタグリプチン投与は、インクレチンの上昇を介して空腹時および食後高血糖を是正するとともに、肝臓由来および小腸由来のapoBレベルをともに低下させ、TGに富むリポ蛋白の合成を抑制すると考えられた。さらに、インクレチンの作用によるインスリン抵抗性の改善と膵β細胞機能の改善に伴い、遊離脂肪酸の濃度が低下し、TGに富むリポ蛋白合成を抑制していることが示唆された。

(日経メディカル別冊編集部)