ドイツLübeck大学のDaniel Hecht von Saldern氏

 外来診療で血管医療に基づく禁煙プログラムに取り組んだところ、喫煙者心臓血管リスクを有意に減少させることができたとする報告があった。内科で禁煙治療を実施することの重要性を示したもので、その成果について、ドイツLübeck大学Daniel Hecht von Saldern氏(写真)らが、11月13日から17日までシカゴで開催される第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で発表した。

 「喫煙は心臓血管に甚大な影響を及ぼす中毒と表現することができる」。こうした危機意識から禁煙対策に取り組んできた演者らは、血管診断方法、ニコチンACH受容体拮抗薬Varenicline(バレニクリン)による治療などを柱とする血管内科での包括的な介入を実施した。

 プログラムの中心となっている項目は、心臓血管リスクの世界的規模での評価、ベースライン時の喫煙状態の記録、患者ケアマップへの禁煙介入の導入、精神科医による個別カウンセリング、適切でタイムリーなバレニクリン治療、外来禁煙クリニックへの紹介――などである。プログラムの有効性は、1年間にわたって評価した。

 2008年5月から2009年11月までの期間に、一般公開された禁煙に関する患者/医師セミナーで64人の喫煙者が確認された(男性59%、平均年齢41±1.7歳)。禁煙プログラムの実施から1年後、52人(82%)が禁煙に成功し、12人(18%)が喫煙を継続していた。なお、禁煙に成功した52人は、2年後にも禁煙を継続していた。

 禁煙に成功した52人と喫煙を継続していた12人で、登録時の患者背景を比較したところ、年齢(41±2対39±4歳)、性別(男性58%対58%)、BMI(26±0.9対26±1.8)、喫煙暦(25±2対23±4年)と目立った違いはなかった。ただし、1日当たりの喫煙本数(33±2対42±3本)、治療期間(21.7±0.7対3.3±0.3週)などで有意差があった(それぞれp<0.05)。

 禁煙した患者において、CO濃度(平均+SEM)は、12カ月後にベースライン時の44+2.4ppmから3+0.2ppmに下がった(p<0.05)。また、血圧と総コレステロールも有意のな減少が見られ(それぞれ149/88+3/1対129/81+2/1mmHg、p<0.01、6.2+0.2対5.2+0.1 mmol/L、p<0.01)、体重に増加はなかった(81+2対82+2kg)。これらの変化をもとに、禁煙した患者において、10年間の致死的心血管疾患の推定リスクを求めたところ、登録時の5.3%が12ヵ月後には1.0%に低下していた。

 こうした結果から演者らは、「われわれの禁煙プログラムでは、他の研究と比較して禁煙成功率が高かった。体重が増えずに血圧と総コレステロールが減少したことは、ライフスタイルの変化に帰する可能性があり、また致死的心血管疾患の10年間推定リスクは有意に低下する結果となった」と強調した。その上で、「総合的な喫煙療法の有望性を実証し、内科でこの治療を実施することの重要性を示すことができた」などと考察した。

(日経メディカル別冊編集部)