スイスBasel大学病院のChristoph Kaiser氏

 動脈径が3ミリ以上の人に対し薬剤溶出ステントを挿入しても、ベアメタル・ステントを挿入した場合に比べ、2年間の心疾患死・心筋梗塞リスクは増大しないことが示された。これは、スイスBasel大学病院Christoph Kaiser氏(写真)らが、約2300人を対象に行った無作為化試験「BASKET-PROVE」で明らかにしたもので、11月13日から17日までシカゴで開催される第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で発表した。

 Kaiser氏らが2003〜2004年に、約800人を対象に行った「BASKET Trial」試験では、動脈径が大きい人に対する第1世代薬剤溶出ステントの使用が、3年間のステント内血栓症リスクの増大、ひいては心血管疾患死・心筋梗塞リスクの増大につながることを示唆する結果が出ていた。今回の結果についてKaiser氏は、「動脈径が大きい人への薬剤溶出ステント使用について、(有害事象を)恐れる必要はなくなった」とし「医師の選択も変わるだろう」と語った。

 研究グループは、2007年3月から2008年5月にかけて、スイス、デンマークなど4カ国、11カ所の医療施設で、動脈径3ミリ以上でステント挿入を必要とする患者2314人について試験を開始した。

 試験では、被験者を無作為に3群に分け、一群にはシロリムス溶出ステントを、別の群にはエベロリムス溶出ステントを、もう一つの群にはベアメタル・ステントをそれぞれ挿入し、2年間追跡した。各群の被験者の平均年齢は、66〜67歳、男性の割合は74〜77%で目立った違いはなかった。

 主要評価項目は、心疾患死と非致死の心筋梗塞の統合イベントだった。副次的評価項目は、7〜24カ月の同統合イベントや、目標血管の血管再生(血管の再治療、TVR)などだった。

 その結果、主要評価項目の発生率は、シロリムス群が2.6%、エベロリムス群が3.2%、ベアメタル群が4.8%と、いずれも有意差はなかった(シロリムス群とベアメタル群;p=0.13、エベロリムス群とベアメタル群;p=0.37、シロリムス群とエベロリムス群;p=0.78)。

 また、7〜24カ月の統合イベントや総死亡、心筋梗塞、ステント内血栓症のいずれの発生率も、3群間で有意差はなかった。

 一方、TVRの割合については、ベアメタル群が10.3%に対し、シロリムス群が4.3%、エベロリムス群が3.7%と、薬剤溶出ステント群のリスクが半減していた(シロリムス群とベアメタル群;p=0.005、エベロリムス群とベアメタル群;p=0.002)。

 Kaiser氏は、今回の結果が以前の試験結果と異なった点について、「推測に過ぎないが、ステント、医師の技術ともに年々質が向上してきていることが原因かもしれない」とした。また、会場での、「以前のBASKET Trialのその後の追跡で、薬剤溶出ステント群とベアメタル・ステント群のイベント発生率の差が縮まってきてはいないのか」とする質問に対し、「追跡5年になるが、両群の差は依然として存在する」と答えた。

(日経メディカル別冊編集部)