カナダBritish Columbia大学のAnthony S.L. Tang氏

 軽度から中程度の心不全患者に対し、心臓再同期療法も行う埋込み型除細動器ICD-CRT)を使用すると、ICDのみの場合比べ、死亡または心不全による入院リスクが25%低下することが分かった。カナダBritish Columbia大学Anthony S.L. Tang氏(写真)らが、約1800人を対象に40カ月行った無作為化二重盲検試験「RAFT」で明らかにしたもので、11月13日から17日までシカゴで開催される第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で発表した。

 これまでの研究から、ICDと心臓再同期療法の併用で、重度心不全の症状の程度や入院リスクを軽減することは明らかになっていたが、より軽度の心不全患者に対する同治療法の効果が明らかになったのは、これが初めて。

 今回の研究結果を受けて発表会場では、「心臓再同期療法が、ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心不全分類で、クラスIIIとIVに限定されている現状のガイドラインを改める必要がある」とする議論が持ち上がった。

 RAFTは「The Resynchronization/Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial」の略称。研究グループは、2003年1月から2009年2月にかけて、カナダやヨーロッパの34カ所の医療機関で、NYHA心不全分類でクラスIIまたはIIIの心不全患者、1798人を対象に試験を行った。被験者の左室駆出分画は30%以下、内因性QRS幅が120msec以上、またはペーシングによるQRS幅が200msec以上だった。被験者の平均年齢は66歳、82%が男性、平均追跡期間は40カ月だった。主要評価項目は、総死亡または心不全による入院だった。

 同研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはICDを、もう一方にはICD-CRTを挿入した。

 その結果、死亡または心不全による入院は、ICD群904人中の364人(40.3%)に発生したのに対し、ICD-CRT群では894人中297人(33.2%)と、有意に低率だった(ハザード比0.75、95%信頼区間;0.64〜0.87、p<0.001)。

 これを必要治療数に直すと、14人を5年間治療することで1人の死亡を、また11人を5年間治療することで1人の心不全による入院を、それぞれ予防できる計算となった。

 死亡のみについても、ICD群の236人に対しICD-CRT群が186人と、ハザード比は0.75(95%信頼区間;0.62〜0.91、p=0.003)だった。心不全による入院は、ICD群の236人に対しICD-CRT群が174人と、ハザード比は0.68(95%信頼区間;0.56〜0.83、p<0.001)だった。

 一方、ICDまたはICD-CRT挿入後30日以内に発生した有害事象は、ICD群が58件だったのに対し、ICD-CRT群は124件と、有意に高率だった(p<0.001)。最も多かった有害事象は、器具のリードが装着位置から移動し再処置を要したもので、ICD群が20人(2.2%)だったのに対し、ICD-CRT群は61人(6.9%)だった。

(日経メディカル別冊編集部)