大阪大学大学院医学部附属病院高度救命救急センターの酒井智彦氏

 大阪府は早くから院外心停止救命救急体制を整備してきたことで知られているが、1カ月後の時点で脳機能が良好な生存が得られる症例は2006年時点で16.5%に留まる。これは、救急隊が心肺蘇生をしても病院到着時に心拍再開が得られない除細動抵抗例が成績不振の要因のひとつになっていることが明らかになった。大阪大学大学院医学部附属病院高度救命救急センターの酒井智彦氏(写真)らが、ニューオーリンズで開催された米国心臓協会・学術集会(AHA2008)で11月11日に発表した。

 酒井氏らの調査によると、1998年5月1日から2006年12月31日までにウツタイン様式でデータベースに登録された院外心停止例のうち、救急隊が関与した成人(18歳以上)の院外心停止例は4万2873件。そのうち心原性が2万5026例あった。その中で市民の目撃(通報)者(バイスタンダー)があった8782例を分析対象とした。

 8782例中、救急隊の捕捉時点における心室細動(VF)心室性頻脈(VT)例は1733例(19.7%)。そのうち、除細動を実施しなかった187例を除いた病院到着時の状況は、心拍再開が298例、VF/VT持続例が392例、無脈性電気的活動(PEA)が270例、心静止が559例、不明が27例だった。

 現場や搬送中に除細動を行ってもVF/VTが継続するショック(除細動)抵抗性症例の予後は悪く、1カ月後生存率は20.4%、脳機能を示すグラスゴー・ピッツバーグ脳機能カテゴリーが1(通常の仕事が可能、生活介助不要)または2(保護された状況でパートタイム労働が可能、生活介助不要)とされたのは5.6%だった(いずれも2006年の成績)。

 病院到着時点で心拍再開が得られていた症例では、1カ月後生存率が約75%、脳機能カテゴリー1/2が50%であるのに比べると、VF/VT継続例の予後は極めて悪いことが分かった。

 大阪では、救急隊到着時にVF/VTで除細動を実施した症例のうち、病院到着時の心拍再開例の比率が、1998年には9.6%、2002年は19.0%、2006年には21.1%と向上しており、一方で、VF/VT継続例は、1998年37.0%、2002年34.8%、2006年19.0%と減少傾向にある。これは、「除細動開始が早くなった、救命救急士の意識が向上したなどの影響が大きいのではないか」(酒井氏)と指摘する。

 半面、VF/VT継続例の脳機能良好比率は、ほぼ一貫して4〜7%程度の低い水準にとどまってきた。

 こうした状況の改善について、共同演者で京都大学保健管理センターの石見(いわみ)拓氏は、「搬送時の医療行為の拡大や、搬送中/到着後の低体温療法など、様々な対応が考慮されるが、従来、病院到着後の状況を登録する体制がなく、実態を把握できなかった。そこで、登録体制を整え、2008年3月から運用を開始した」という。実態を把握した上で、改善を進め、成績向上につなげる構えだ。