カナダ・マクマスター大学内科準教授のShamir Metha氏

 急性冠症候群(ACS)患者に対する24時間以内の早期治療の優越性を検証した国際臨床試験TIMACS」試験の最新結果が示された。死亡MI脳卒中を含む複合1次エンドポイント有意差を示せなかったが、より重症の患者においてと、一部の2次エンドポイントでは早期治療が有意に低リスクであり、しかも安全性は同等だった。米国心臓協会・学術集会AHA2008)2日目のセッションLBCTで、カナダ・マクマスター大内科準教授のShamir Metha氏(写真)らが報告した。

 TIMACS(TIMing of Intervention in Acute Coronary Syndrome)は、17カ国100施設で実施された無作為化国際多施設臨床試験である。

 対象は、不安定狭心症、または非ST上昇型急性冠症候群患者で、(1)60歳以上、(2)心電図上での虚血、(3)バイオマーカーでの虚血のいずれか2条件を満たし、再灌流治療が可能な症例とした。患者はアスピリンクロピドグレル血小板膜糖たんぱく(GP)IIb/IIIa受容体拮抗薬などを投与の上、早期治療群(24時間以内のPCIまたはCABG施行、n=1593)と遅延治療群(同36時間以降、n=1438)に無作為割り付けした。

 1次エンドポイントは、6カ月以内の死亡、心筋梗塞(MI)の新規発症、または脳卒中の複合イベント。2次エンドポイントはいずれも6カ月以内の、(1)死亡、MIの新規発症、または難治性虚血、(2)死亡、MIの新規発症、脳卒中、難治性虚血、または再灌流の再発、(3)脳卒中、とした。

 ベースラインの主な患者プロフィールは、早期群と遅延群で、平均年齢が65.1歳対65.8歳、女性が34.8%対34.7%、MI既往が19.7%対20.9%、脳卒中既往が7.2%対7.5%だった。

 結果は、1次エンドポイントに達したのが、早期群の9.7%、遅延群の11.4%で有意差は認められなかった(HR=0.85、95%CI:0.68-1.06、p=0.15)。

 2次エンドポイントのうち、死亡、MI、難治性虚血は、早期群で28%(HR=0.72、95%CI:0.58-0.79、p=0.002)、死亡、MI、難治性虚血、脳卒中、再灌流の再発は16%(HR=0.84、95%CI:0.71-0.99、p=0.039)のいずれも有意なリスク減少がみられた。また難治性虚血の単独比較では、早期群1.0%、遅延群3.3%で、早期治療は70%ものリスク減少になることが分かった(HR=0.30、95%CI:0.17-0.53、p<0.00001)。

 さらに、ACSの重症度スコアとして有用性が認められているGRACEリスクスコアで、軽度・中等度群(GRACEスコア<140、n=2070)と重症群(GRACEスコア≧140、n=961)に分け、1次エンドポイントについて改めて比較したところ、軽度・中等度群では、早期群が7.7%、遅延群が6.7%で有意な差はなかった(HR=1.14、95%CI:0.82-1.58、p=0.43)が、重症群では、早期群が14.1%、遅延群は21.6%で、35%のリスク低減が確かめられた(HR=0.65、95%CI:0.48-0.88、p=0.005)。

 これらの結果から、Metha氏らは、1次エンドポイントについては有意差が得られなかったが、重症ACS群では早期治療の有用性が明らかになったと結論した。

 Metha氏は、早期群と遅延群で出血など安全性に差はみられなかったことを併せて示し、「早期治療は利益が得られる可能性がある上に安全性に遜色はなく、ACS治療の標準的方針としてよい。また、重症患者に対しては可能な限りの早期治療を施すべきだ」と考察した。

 指定討論に立った米ボストン・ブリガムアンドウィメンズ病院心血管インターベンション統合プログラム部長のDeepak Bhatt氏は、「早期治療は入院期間の短縮につながり、コスト削減にも貢献し得る」とし、さらに「患者の視点から見れば、迅速な治療で失うものはなく、有益な可能性が高い。私が患者なら早期治療を希望する」と述べた。