Brigham and Women's HospitalのLaura Mauri氏

 糖尿病患者では薬剤溶出性ステントDES)とベアメタル・ステントBMS)のどちらが有益なのか――。この問いかけに1つの答えが出された。登録研究であるMass-DAC registryの結果、DESの方がBMSよりも有意に主要心疾患イベントの発生を抑制することが分かった。Brigham and Women's Hospital(米、ボストン)のLaura Mauri氏(写真)らが11月10日、ニューオーリンズで開催されている米国心臓協会・学術集会AHA2008)で発表した。

 糖尿病が増加の一途をたどる中、血行再建術が必要になる糖尿病患者も増加していくと予想されている。しかし、糖尿病患者に対するインターベンション(PCI)は非糖尿病患者に比べてその転帰が不良である上に、BMSによるPCIは再狭窄率が高く、一方でDESは臨床試験での評価が十分ではないという課題を抱えていた。演者らは、こうした問題を解明するため登録研究を実施した。

 対象としたのは、米マサチューセッツ州のデータベースであるMass-DAC registryの症例。2003年4月〜2004年9月までにPCIを受け、3年間追跡された2万1045人から糖尿病患者6008人を抽出した。このうち、DESとBMSの両方を受けていた372人を除くなど、最終的に5051人を解析の対象とした。

 内訳は、DES群が3341人(66%)で、BMS群が1710人(34%)だった。DES群では、シロリムス溶出性ステント(SES)が73%に、パクリタキセル溶出性ステント(PES)が25%に、SESとPESの両方が2%に、それぞれ実施されていた。

 両群の患者背景を比較したところ、年齢、人種(白人)、心筋梗塞(MI)の既往、冠動脈大動脈バイパス術 (CABG)の既往のそれぞれの割合はBMS群で高く、高脂血症、高血圧ではDES群の方が高かった。

 具体的には、年齢はDES群65.3±11.4歳に対しBMS群66.3±11.8歳(p=0.002)、人種では白人の割合がDES群86.7%に対しBMS群87.9%(p=0.04)、心筋梗塞の既往はDES群34.5%に対しBMS群37.5%(p=0.03)、CABGの既往はDES群19.0%に対しBMS群23.3%(p<0.001)だった。一方、高脂血症はDES群85.1%に対しBMS群83.0%(p=0.05)、高血圧はDES群88.5%に対しBMS群84.8%(p<0.001)だった。

 解析の結果、追跡3年時点での転帰を比較したところ、患者背景を調整した後の死亡率は、DES群(1476人)で17.5%(258例)だったのに対し、BMS群(1476人)で20.7%(305例)となった。同様に、調整後のMI発生率は、DES群14.9%(204例)に対しBMS群18.1%(249例)、調整後の血管再建術の実施割合は、DES群20.0%(271例)に対しBMS群25.9%(350例)だった。

 それぞれのBMS群に対するDES群のリスクの差は、死亡率が-3.2ポイント(95%信頼区間、-6.0〜-0.4、p=0.02)、MIの発生率が-3.0ポイント(同-5.0〜-0.5、p=0.02)、血管再建術の実施率が-5.4ポイント(同-8.3〜-2.4、p<0.001)となり、いずれにおいてもDES群がBMS群より有意に低いという結果だった。

 演者らはこれらの結果から、「糖尿病患者ではDESがBMSよりも有益であることが示された」と結論した。登録研究という限界はあるものの、今回の研究は、DESの使用を支持する新たなエビデンスを積み上げたものとして評価されよう。