英サウザンプトン大学病院電気生理学コンサルタントのPaul Roberts氏

 埋め込み型ペースメーカー除細動器(ICD)は通常、電池交換などのため、数年ごとに摘出する必要がある。このやっかいな電池交換を不要にするかもしれない新たな研究成果が、ニューオーリンズで開催中の米国心臓協会・学術集会で発表された。心臓の動きを利用して発電する超小型の発電モジュールでペースメーカーなどを駆動するというもの。動物実験の段階だが、高機能化と小型化を両立する新技術として注目される。英サウザンプトン大学病院電気生理学コンサルタントのPaul Roberts氏(写真)らが、11月10日のポスターセッションで報告した。

 Roberts氏らは、豚を用いた実験で動作を検証した。発電モジュールは、リニアモーターの原理を発電に応用したもの。カテーテルの2カ所に柔らかな袋があり、一方を右室心尖部、他方を右心房付近に設置すると、両端の袋にかかる圧力差によって磁気回路が磁界の中を動き、電力が得られる仕組みだ。マイクロフォンの原理に近い。心臓には十分な余力があり、長期にわたってこの程度の負荷をかけても心機能に影響を与える危険は少ないという。

 実験では、不整脈を有する患者に用いられることを想定して、頻脈徐脈低血圧心房細動の各状態を再現し、得られる電力の変化をみた。

 その結果、安静時(心拍;90-104)には1心拍当たり4.3μJだが、頻脈時(心拍;105-128)には9.6μJ/心拍、徐脈時(心拍;60-80)には3.0μJ/心拍、心房細動時(心拍;100-125)には1.5μJ/心拍で、心房細動時の単位時間当たり発電量は、安静時の3分の1に低下していた。

 本研究で得られた発電量は、現行のペースメーカーに必要な電力の17%だったが、Roberts氏らは、素材の変更などによって必要な全電力を供給できる見通しだという。発電モジュールのサイズも、現行ICDのリード線と同程度まで小型化できるとする。電池レスで動作するペースメーカーの登場も夢ではない。

 ICDやペースメーカーは、診断機能の充実などソフトウエアの高度化や無線による遠隔管理など、高性能化、多機能化を迫られている。高機能化に見合う電力を得るには、これまでは電池を大容量化するしかなかったが、本研究の成果をもとに“人力発電機”が実用化されれば、小型化と高機能化を同時に実現する道が開かれることになる。