シドニー大のAnthony Keech氏

 2型糖尿病において、推定糸球体ろ過量eGFR)と蛋白尿は、たとえ低リスクの患者でも、心血管イベントと死亡を予見する指標になりうることが報告された。FIELD試験をベースとした解析によるもので、シドニー大NHMRC Clinical Trials Center、オーストラリア)のAnthony Keech氏(写真)らが11月9日、ニューオーリンズで開催されている米国心臓協会・学術集会AHA2008)で発表した。

 一般集団において、eGFRが減少すると、心血管疾患(CVD)の有病率と死亡率は増加する。このことは、2型糖尿病患者においても示唆されている。また、2型糖尿病患者の追跡調査から、登録時に蛋白尿を認める患者では、死亡率が増加することも報告されている。そこで演者らは、2型糖尿病におけるeGFRと蛋白尿の意義を解明するため、登録時の慢性腎疾患(CKD)あるいは蛋白尿の状態と、その後のCVDのアウトカムとの関係を検討した。

 FIELD試験は、フェノフィブラート(200mg/日)またはプラセボの二重盲検無作為臨床試験で、平均5年間にわたって9795人の患者を対象に行われた。演者らは、FIELD試験の対象を登録時のCKDのステージにより、eGFR≧90群(4058人)、eGFR60−89群(5218人)、eGFR30−59群(519人)の3群に分け、さらにそれぞれの群で蛋白尿の有無別に心血管イベントのリスクを比較した。

 登録時の平均年齢は62歳で、63%が男性、糖尿病の平均罹病期間は5年間だった。登録時、CKDのステージが4または5(eGFR<30ml/分/1.73m2)の患者はいなかった。CVDイベントおよび死亡については、第三者委員会を設置し判定した。

 GFR≧90群の蛋白尿正常を1.00とした場合の心血管イベント(n=1295)の補正ハザード比を求めたところ、次のような結果となった。eGFR>90群では、微量アルブミン尿+で1.25、蛋白尿+で1.19と、蛋白尿の状態が悪化するほどハザード比が高くなった。

 また、eGFRが低い群、つまりCKDのステージが進むほどハザード比は高くなり、eGFR60−89群では蛋白尿正常で1.11、微量アルブミン尿+で1.42、蛋白尿+で1.77、eGFR30−59群では蛋白尿正常で1.63、微量アルブミン尿+で1.93、蛋白尿+で2.29となった。

 総死亡(n=679)の補正ハザード比は、GFR≧90群の蛋白尿正常を1.00とした場合、eGFR>90群では微量アルブミン尿+で1.60、蛋白尿+で1.71、eGFR60−89群では蛋白尿正常で1.10、微量アルブミン尿+で1.35、蛋白尿+で2.09、eGFR30−59群では蛋白尿正常で1.93、微量アルブミン尿+で2.25、蛋白尿+で3.48だった。

 心血管死(n=267)の補正ハザード比は、GFR≧90群の蛋白尿正常を1.00とした場合、eGFR>90群では微量アルブミン尿+で1.73、蛋白尿+で1.89、eGFR60−89群では蛋白尿正常で1.18、微量アルブミン尿+で1.37、蛋白尿+で2.59、eGFR30−59群では蛋白尿正常で2.36、微量アルブミン尿+で2.96、蛋白尿+で5.26だった。

 これらの結果から演者らは、「CKDの登録時ステージの進展と蛋白尿の上昇は、CVDイベント発生と死亡を単独で予見し、総死亡も予見する」と結論した。eGFR>90群でも同様だったことから、「たとえ低リスクの患者でも予見しうる」と指摘した。