米ハーバード大学ブリガム女性病院のEldrin F. Lewis氏

 心筋梗塞後慢性期のQOLは慢性閉塞性肺疾患(COPD)とほぼ同等だが、その後、心血管系イベントが発生すると、イベントの種類によってはQOL不良の癌患者と同等近くまで低下する。そんな可能性が、大規模試験VALIANTのデータを解析した結果、明らかになった。米ハーバード大学ブリガム女性病院のEldrin F. Lewis氏が、米国心臓協会・学術集会の最終日、E-ポスターセッションにて報告した。 Lewis氏らは、心筋梗塞後慢性期の「健康に関連したQOL」(HRQOL)に心血管系イベントが与える影響を検討すべく、VALITANTのデータを解析した。VALIANTは心筋梗塞亜急性期に対するバルサルタンの有用性を、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬と比較した無作為化試験で、心筋梗塞発症後0.5〜10日間の心不全・左室機能低下例が対象である。

 HRQOLは無作為化15日後あるいは退院時に初回評価が行われ、その後は半年に1回の評価とした。HRQOLが評価されたのは一定の国々から参加した2556例である。今回検討の対象となったのはVLIANT参加1万4703例中、試験開始後に1回だけ心血管系イベントを経験し、かつその次の回のHRQOL調査まで生存していた458例。イベントを「1回」に限定したのは、HRQOLに与える影響をイベントの種類別に評価するためである。HRQOLの評価にはVisual Analogue Scale(VAS)を用いた。スコア0(最低)からスコア100(最高)までの間でその時点での健康状態を評価する。

 その結果、心筋梗塞発症直後のVASスコア平均値は65.6±18、最頻値は71〜80だった。慢性閉塞性肺疾患や慢性心不全のスコアが62と言われているので、それらの疾患とほぼ同等のHEQOLと考えてよい。

 次にLewis氏は、この65.6というVASスコアがその後の心血管系イベントによりどれほど減少したかを検討した。すると「非致死性心血管系イベント」によりVASスコアは6.8(95%信頼区間:4.1〜9.4)有意に損なわれていた(p<0.0001)。内訳を見ると、「蘇生された突然死」(14.4)と「脳卒中」(10.5)でVASスケールは大きく損なわれていた(カッコ内、損なわれたスケール)。仮に「蘇生された突然死」を経験したとするとVASスケールは65.6から51.2に低下し、「43〜84」と言われるがん患者のVASスコアと対比しても決して良好とは言えないことが分かる。
 これらの解析からLewis氏は「心筋梗塞既往患者では、HRQOL維持のためにも、心血管系イベントを抑制する必要がある」と結論した。