米ハーバード大学ブリガム女性病院のJudith L. Meadows氏

 心筋梗塞後に左室機能低下を来たした症例では、左室駆出率(EF)と並び腎機能が予後因子であることは知られているが、これらの2因子は独立して予後に影響を与えていることが大規模試験VALIANTのデータベースの解析から明らかになった。米国心臓協会・学術集会最終日の一般口演で、米ハーバード大学ブリガム女性病院のJudith L. Meadows氏が報告した。

 今回の解析対象は、VALIANT参加1万4703例中、試験開始時のEFと血清クレアチニンのデータが揃っている1万1182例。腎機能は推定糸球体濾過率(eGFR)で評価し、eGFRの算出にはMDRD式を用いた。

 まずEFを5段階(20%未満、20〜29%、30〜39%、40〜49%、50%超)に、eGFRは60mL/分/1.73m2「未満」と「以上」の2群に分け、総死亡リスクを比較した。すると、EFの低下に伴い、死亡率が段階的に増加すると同時に、eGFR「未満」群でも「以上」群に比べ、EFの高低を問わずおおむね2倍から3倍もリスクが上昇していた。

 次にEFとeGFRを今度は連続変数として総死亡に与えるリスクを算出したところ、死亡リスクは「EFの10%低下」により1.58倍、eGFR10mL/分/1.73m2低下」により1.40倍、それぞれ有意に増加していた。

 しかしEF、eGFRとも高低により患者背景が異なる。そこで「年齢、喫煙、心拍数、収縮期血圧、経皮的冠血行再建術(PCI)、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞既往、心不全既往、心筋梗塞発症時のKilli分類」で補正後、再びEFとeGFRが死亡リスクに与える影響を算出した。その結果、やはり死亡リスクは「EF10%低下」により35%,eGFR10mL/分/1.73m2低下」により21%、有意に増加していた。

 EFとeGFRを組み合わせて死亡リスクを算出すると、eGFR:60mL/分/1.73/m2「未満」の患者であれば、EFの10%低下による死亡リスクの増加は1.12(95%信頼区間:1.02〜1.22)だが、リスクの高いeGFR:60mL/分/1.73/m2「未満」の患者では1.50(95%信頼区間:1.37〜1.62)とリスク増加が著明となることが明らかになった。

 また、EFとeGFRは総死亡だけでなく「死亡+心血管系イベント」に対しても予知因子となっており、「EF10%の低下」がもたらすリスク増加は1.08(95%信頼区間:1.05〜1.12)、「eGFR10mL/分/1.73m2低下」でも同様に1.08(95%信頼区間:1.05〜1.11)だった。

 Meadows氏は、VALIANTでは「血清クレアチニン2.5mg/L以上」の患者が除外されているため、「重篤な腎障害例に当てはまるかどうかは不明」とはしながらも、「低EFと低eGFRは独立して予後を増悪させるため、心筋梗塞後患者の予後判定に当たっては両者を評価する必要がある」と結論付けていた。