高血圧患者に多く認められる左室肥大だが、北海道大学循環器病態内科学の山田聡氏らが検討したところ、肥大心では心筋還流も低下しており、それらの症例に対するバルサルタン投与は心肥大だけでなく心筋還流も改善することが明らかになった。研究成果は米国心臓協会・学術集会のポスターセッションで11月5日に報告された。

 検討の対象となったのは、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を服用しておらず、心肥大を認めた本態性高血圧(140/90mmHg以上)12人。冠動脈疾患、弁膜疾患、心筋症や糖尿病の合併例は除外、心肥大の規準は「左室壁厚12mm以上」とした。また対照群として、年齢と性別をマッチさせた健常者10人を置いた。

 背景因子を比較すると、血圧と心肥大に関するパラメータ以外の違いは、高血圧群における「心拍数高値(68拍/分 vs 58拍/分)のみだった。またコントラスエコー法で評価した心筋還流は、対照群の3.31%に対し、左室肥大合併高血圧群では2.55%と有意(p<0.01)に低かった。

 次に山田氏らは、バルサルタンが心肥大合併高血圧患者に及ぼす影響を検討した。心肥大合併高血圧の12人中8人がバルサルタン80mg/日を服用し、1カ月後に140/90mmHg未満を達成しない場合には160mg/日に増量、さらに1カ月おきに血圧をチェックして、140/90mmHgを達成しない場合には利尿薬を追加・増量し、6カ月間観察した。

 その結果、収縮期血圧は153mmHgから134mmHgへ有意(p<0.01)に低下し、拡張期血圧も88mmHgから75mmHgへ有意(p<0.001)に低下した。

 降圧に伴い、左室肥大も有意に退縮した。まず心室中隔壁厚、後壁厚はいずれも有意に減少し、また左室重量、左室重量指数も有意に低下していた(いずれもp<0.05)。さらに、低下していた心筋灌流も、バルサルタン服用6カ月後には有意に増加していた(2.41%→2.63%,p<0.05)。注目すべきことに心筋灌流の増加と有意に相関していたのは、降圧度ではなく、左室重量指数減少度であった。

 山田氏らは「バルサルタンは高血圧患者の左室肥大退縮を介し、心筋灌流も改善する」と結論している。