Weil救急病院のMin-Shan Tsai氏

 冷却ガス酸素を鼻腔から送り込んで低体温を実現するという新たな手法が開発され、ブタを使った実験で、心肺蘇生(CPR)の生存率などが高まることが示された。救急車などに装置を搭載すれば、心肺停止の直後から低体温療法が可能になり、救命率の改善につながる可能性もある。米カリフォルニア州ランチョミラージュ市Weil救急病院のMin-Shan Tsai氏らの研究で、米国心臓協会・学術集会のポスターセッションで11月5日に報告された。

 心肺停止が起きた時、CPR後に低体温療法を施すと、心筋や中枢神経の障害が発生しにくく、生命予後も良いことが知られている。動物実験では、あらかじめ低体温にしてから心肺蘇生を行うと、除細動の成功率が高いことが確かめられている。

 そこでTsai氏らは、ブタを使った実験で、パーフルオロカーボン系の冷却ガスと酸素の混合気を、カニューレを使って鼻腔から送り込む低体温療法を心肺停止直後から行う実験を行った。

 16匹のブタ(平均体重=40.6kg)を無作為に冷却群と対照群の2群(共にn=8)に分け、全数に対し、心房細動を誘導した。10分間放置後、エピネフリンを投与し、装置による胸部圧迫と換気によるCPRを5分間行い、さらに電気的除細動を行った。

 冷却群に対しては、CPR時に冷却を開始、体幹温度が34度に達するか4時間が経過するまで冷却を続けた。さらに4時間、体幹温度が34.5度を上回った場合は冷却を再開して低体温を維持した後、冷却を中止し、自然な体温回復を行った。心拍再開後、すべてのブタに対して最初の4時間、1時間ごとに心エコーを測定し、96時間後に再度、測定した。

 その結果、96時間後には冷却群は8匹すべて(100%)が生存していたが、対照群では8匹中2匹(25%)で有意に生存率が低かった(p=0.003)。

 心拍再開に至るまでに必要な除細動の回数は、冷却群の8.1回に対して対照群は14.6回と、冷却群が少ない傾向だった(p=0.08)。CPRに要した総時間は、冷却群(約6分)が対照群(10分)の半分と有意に短かった(p=0.01)。

 心エコーで計測した心機能を両群で比較すると、左室駆出率(LVEF)、左室内腔面積変化率(FAC)、等容性拡張時間(IRT)は、いずれも冷却群が心拍再開1時間後から有意に良好だった。

 心肺蘇生と同時に鼻腔からの冷却を開始すると、開始後ただちに頸部静脈温が下がり、30分以内に32度程度まで低下して安定する。一方、体幹温度は心拍再開から徐々に低下し、3時間程度で34度近くに下がる。Tsai氏は、「本法は、追加の身体冷却の実施にかかわらず、心筋障害の緩和と生命予後の改善に有益」としていた。