ハーバード大学のPeter H Stone氏

 バルサルタンスタチン併用の有無にかかわらず破綻しやすいプラークを安定化させる可能性が、糖尿病モデルを用いた実験で明らかになった。本研究では血管壁低ずり応力炎症のリスクであり、そのような炎症に対するバルサルタンの抗炎症作用も示された。本データは、米国心臓協会・学術集会の初日、11月5日午前中のポスターセッションにおいて、ハーバード大学のPeter H Stone氏が報告した。

 同氏らは、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ブタ12頭を、プラセボ群、バルサルタン320mg/日群、バルサルタン320mg/日+シンバスタチン40mg/日群(スタチン併用群)の3群に割り付けた(各群n=4)。血圧、血清コレステロール値、血糖値は6群間で同等だった。

 試験開始後23週時と30週時に血管内エコー法(IVUS)を用いて頸動脈肥厚を評価したところ、23週時には既にバルサルタンによる抗動脈硬化作用が認められた。

 頸動脈壁肥厚重症度を「グレード0」(軽症)から「グレード3」(最重症)に分類したところ、23週時にプラセボ群では最も多かった「ステージ2」動脈壁肥厚が、バルサルタン群とスタチン併用群ではほとんど認められなかった。

 さらに、プラセボ群では30週時、「ステージ2」肥厚を認めた血管部位が23週時に比べ著明に増加していたのに対し、バルサルタン群とスタチン併用群ではほぼ不変だった。またプラセボ群では「ステージ3」肥厚を観察したが、バルサルタン群とスタチン併用群では23週、30週時いずれも全く認められなかった。

 このようなIVUS所見の背景を確認すべく、Stone氏らは30週時に病理組織の検討を行った。するとプラーク脆弱性の一因となる「線維性被膜(Fibros Cap)に占める繊維化組織」の割合が、プラセボ群に比べてバルサルタン群とスタチン併用群では有意に減少していた。

 同様に、ポジティブリモデリング(プラーク崩壊好発部位)における炎症も、バルサルタン群・スタチン併用群ともプラセボ群に比べ有意に抑制されていた。同部位ではMMP(マトリックス分解酵素)-9の有意な発現減少、またMMP阻害物質に対するMMP比(MMP/TIMP比)の有意な減少が認められたため、これらが炎症作用減少機序の一因と考えられた。

 本研究で興味深いのは、ずり応力と炎症の関係である。23週時にIVUSを用いて評価した「血流に対する内皮細胞ずり応力」と炎症の関係を検討しているのだが、血管壁の炎症面積は「高」ずり応力の部位よりも「低」ずり応力の部位で有意に大きく、さらにバルサルタン群とスタチン併用群では「低ずり応力による炎症」が有意に抑制されていた。この「低ずり応力による炎症」を同氏は重視しており、引き続きヒトで検討する予定だという。