ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJens J Thune氏

 心機能低下心不全を伴うハイリスク急性心筋梗塞後症例の高血圧の存在は、予後悪化に繋がる可能性がある。また、低血圧心イベントの危険因子となるようだ。急性心筋梗塞後大規模臨床試験VALIANT のサブ解析結果から、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJens J Thune氏が報告した。

 VALIANT は、心機能低下や心不全を伴う急性心筋梗塞後症例におけるアンジオテンシンII受容体拮抗薬ARBバルサルタンアンジオテンシン転換酵素ACE)阻害薬カプトプリル、および両剤併用の予後改善効果を比較した大規模臨床試験で、プライマリーエンドポイント(総死亡)、セカンダリーエンドポイント(心血管死、心筋梗塞再発、心不全による入院など)ともにバルサルタン群とカプトプリル群、併用群とカプトプリル群の間に有意差はなく、非劣性解析でバルサルタン群のカプトプリル群に対する同等性が既に証明されている。なおVALIANT においては、収縮期血圧100mmHg未満は対象から除外されていた。

 高血圧が心筋梗塞、脳卒中、心不全、死亡などの危険因子であることは分かっているし、心筋梗塞そのものが血圧に影響を与えることも知られている。しかし、心機能低下や心不全を伴うようなハイリスク心筋梗塞後の血圧値が長期的予後にどのような影響を与えるかは不明だった。
 
 そこでThune 氏らは、VALIANT 症例(生存例で試験開始後6カ月の時点でのイベント回避例)を対象にこの問題を検討した。高血圧は1、3、6カ月受診のうち2回にわたって140 mmHg以上を高血圧、100 mmHg以下を低血圧とした。高血圧群(平均151/84mmHg) は1522 例、低血圧群(平均95/62 mmHg) は602 例、正常血圧群(平均121/73mmHg) は8408例だった。患者背景をみると高血圧群は、高齢で女性が多く、左室駆出率が高く、糸球体瀘過量が低く、糖尿病が多いなどの特徴があった。また高血圧既往の頻度も高かった。

 高血圧群では、正常血圧群より総死亡、心血管死、脳卒中、心筋梗塞再発、突然死/心停止、心不全による入院、複合心血管イベント(前項より総死亡を除いたもの)などの項目が、有意に増加していることが分かった。年齢、性、心筋梗塞・心不全・脳卒中などの既往、試験開始時の糖尿病・末梢動脈疾患・高血圧・BMI ・糸球体瀘過量・NYHA分類などで補正しても、脳卒中や複合心血管イベントなどは高血圧群で有意に多かった。一方、低血圧群では補正後も総死亡や心血管死が有意に多いこと分かった。

 同解析は、急性心筋梗塞発症6カ月時点でのデータなので、より早期である1カ月後時点の患者に一般化して考えることはできないし、血圧測定はあらかじめ厳密に決められたプロトコールによるものではないという限界がある。また心筋梗塞発症後の高血圧治療が予後を改善するかどうかも不明だが、高血圧のみならず低血圧も含めた急性心筋梗塞発症後の血圧管理の重要性を浮き彫りにしたと言える。