愛媛大学大学院医学系研究科分子心血管生物学・薬理学助教授の岩井將氏

 愛媛大学大学院医学系研究科分子心血管生物学・薬理学助教授の岩井將氏らは、メタボリックシンドロームにおける脂肪組織機能に対するアンジオテンシンII受容体タイプ1(AT1)刺激をめぐって検討し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)であるバルサルタンがメタボリックシンドローム予防に有用であることを示唆する成績が得られたと報告した。

 メタボリックシンドロームの典型は、高血圧高脂血症高血糖を伴う肥満である。一方、最近、脂肪組織がアディポサイトカインを産生する内分泌器官として重要な役割を果たしていることが分かってきた。脂肪細胞はレニン-アンジオテンシン系の基質であるアンジオテンシノーゲンも産生するが、続いて産生されたアンジオテンシンII(AII)は脂肪細胞の機能に影響を与える。すなわち、AIIは脂肪の分化(小型化)を抑制して大型細胞にし、その結果善玉のアディポネクチンが減少し、悪玉であるTNF-αなどが増加して、これがインスリン感受性低下や粥状硬化に結び付く可能性が考えられ、話題になっている。

岩井氏らは、粥状硬化モデルにはApoEノックアウトマウスAT1a受容体/ApoEダブルノックアウトマウス、2型糖尿病モデルにはKK-AYマウスを使い、野生株(C57BL/6)と対比する形で検討を進めた。

 同氏らが得た結果は次のようにまとめることができる。
(1)AT1a受容体/ApoEダブルノックアウトマウスの血漿コレステロール値、血漿遊離脂肪酸、脂肪細胞サイズは、ApoEノックアウトマウスよりも低かった。
(2)AT1a受容体/ApoEダブルノックアウトマウスでは、血圧、脂肪組織重量は有意に減少した。また脂肪細胞において、アディポネクチン、PPARγ、C/EBPαおよびaP2(脂肪細胞分化マーカー)などが増加した。
(3)KK-AYマウスでは、脂肪細胞サイズは拡大し、MCP-1およびTNF-αが増加したが、脂肪組織におけるPPARγ、C/EBPαは減少した。
(4)ARBのバルサルタン(浸透圧ミニポンプにて1//日を14日間投与)でKK-AYマウスを治療すると、脂肪組織で観察されたこれらの変化が有意に改善した。

 以上のデータに基づき岩井氏は、「ARBのバルサルタンが粥状硬化や糖尿病における脂肪細胞の分化を改善(促進)することが示唆された。こうした脂肪細胞の機能や脂質代謝に対する有益な作用は、メタボリックシンドロームの予防にも通じる」と結論している。