米Case Western Reserve大学のOttorino Costantini氏

 埋め込み型除細動器ICD)は高コストの治療法なのに、駆出力低下を主な判定基準として装着した場合、生涯、ICDが作動しないケースが3分の2以上を占めるとする報告がある。このほど、より有効な判定を得られるものの侵襲性が高い電気生理学検査EPS)と、低侵襲のマイクロボルトT波交互脈検査MTWA)を比較した介入試験の結果、MTWAがEPSと同等に有効で、不要なICD装着の回避に貢献し得ることが示された。ABCD(Alternans Before Cardioverter Defibrillator)試験の成果報告として、米Case Western Reserve大学のOttorino Costantini氏が、11月15日の最新臨床試験報告(LBCT:Late-Breaking Clinical Trial)で発表した。

 MTWA検査はストレステストと似ており、トレッドミルの上を歩く患者の心臓の電気的な活動の変化を皮膚表面に付けたセンサーで感知する。T波交互脈は、T波の極性や振幅が交互に変化する状態で、不整脈出現の危険性が極めて高いことを示す。MTWAが正常な患者の場合には、心臓突然死リスクは低いことが知られている。

 一方の電気生理学検査(EPS)は、心臓内に電極カテーテルを挿入し、心臓内部の電位を記録、また電気刺激を与える。リスクは低いが侵襲的な検査法だ。

 Costantini氏らが分析対象としたのは、米国、ドイツ、イスラエルの42医療機関で登録された566人の被験者(平均年齢65歳)。虚血性心筋症による心臓のダメージを経験しているが、不整脈歴はない患者で、左室駆出率(LVEF)は40%以下(平均28%)だった。β遮断薬、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、スタチンの使用頻度はいずれも80%以上で、薬物療法はよく行われていた。

 対象患者すべてに対し、MTWAとEPSの両検査を行った。その結果、EPS陽性は39%、陰性は61%、MTWA検査で陽性は46%、陰性は29%、不確定が25%だった。一方、または両方の結果が陽性だった患者にICDを適用。両方とも陰性の場合には、患者と医師がICDを適用するかどうか判断した(結果として70%の患者にICDが適用された)。全体では80%の患者がICD埋め込み術を受けた。

 その後2年間の追跡で半年ごとに患者を診察、ICDが作動したかどうかを調べたところ、適切に作動した患者は51人、不適切なショックだけを経験した患者は61人いた。

主要エンドポイントである心室頻脈イベント(ICDの作動、心臓突然死、心室頻脈に対する抗頻拍ペーシング)は65人に見られた。イベント発生率は、1年後の時点で7.5%、2年後は14%で、全体として少なかった。

 12カ月時点では、EPSとMTWAの両検査に陽性的中率と陰性的中率に有意差はなく、予測能力は同等であることが示された。

 カプランマイヤー法を用いて、それぞれの検査で陽性になった患者と陰性になった患者のイベント発生率を、時間経過を追って比較したところ、EPSでは、9カ月目から、追跡終了時の24カ月目までハザード比が有意だったが、MTWA検査では6カ月目から12カ月目までは有意で、その後、有意差はなくなった。これは、不整脈リスクに関わる心臓の状態が常に変化していることを示唆する。したがって、MTWA検査は毎年1回行う必要があると考えられた。

 イベント発生率は、両検査とも陰性なら2.3%、MTWA陽性でEPS陰性なら5.0%、MTWA陰性でEPS陽性なら7.5%、両方陽性なら12.6%だった。これは、両検査の併用が精度向上に有益であることを示している。

 Costantini氏はこれらの結果から、診断基準別に、検査陽性なのにICDが作動しない比率を提示した。それによると、LVEF40以下を指標とする場合が最も多くて92%で、ESP陽性を指標とする場合が最も少なく、約35%だった。

 MTWA検査の予測能力がEPSに劣らないことが示されたことで、まず、侵襲性の低いMTWA検査を先に行い、結果が正常ならEPSを実施する方法が有用であることが示された。Costantini氏は、2つの検査結果がともに陰性の場合には埋め込みをしないことで、ICD適用を17%減らせるという。ただし、MTWA検査は毎年、定期的に行う必要があるとしていた。