米ハーバード大のChristopher Cannon氏

 選択的COX-2阻害薬エトリコキシブと非選択的な非ステロイド系抗炎症薬NSAIDsジクロフェナク血栓性心血管イベント発生率は同等−−。米ハーバード大準教授でブリガムアンドウイメンズ病院のChristopher Cannon氏は、11月13日の最新臨床試験報告(LBCT:Late-Breaking Clinical Trials)セッションで、大規模国際多施設臨床試験MEDALスタディの成果をこう報告した。

 MEDAL(Multinational Etoricoxib and Diclofenac Athritis Long-term)スタディは、変形性関節炎(OA)または関節リウマチ(RA)の患者約3万5000人を対象に、選択的COX-2阻害薬であるエトリコキシブと、非選択的なNSAIDsであるジクロフェナクの、血栓性心血管イベント発生率を比較した。OA/RA患者を対象とした無作為化臨床試験としては最大規模という。

 MEDAL研究は、46カ国の1380施設で行われた3件の臨床試験(EDGE、EDGE II、MEDAL)からなる。今回報告されたのは、あらかじめ設定されていた、これら3試験のデータのプール解析の結果だ。

 これまでに複数の臨床試験で、偽薬に比べて選択的COX-2阻害薬の方が、血栓性心血管イベントリスクを高めることを示す結果が得られている。しかし、NSAIDsと選択的COX-2阻害薬の心血管リスクを直接比較する目的の臨床試験は、これまで行われていなかった。

 プログラム全体で、50歳以上の患者3万4701人(2万4913人がOA、9787人がRA)を登録、エトリコキシブ(60mgまたは90mg/日)またはジクロフェナク(150mg/日)に無作為に割り付けた。目的は、per protocol分析で、血栓性心血管イベントのハザード比の95%信頼区間の上限が1.30未満、と定義されたエトリコキシブの非劣性を示すことにあった。

 治療期間中(平均18カ月)に、エトリコキシブ群の320人、ジクロフェナク群の323人に血栓性心血管イベントが発生。イベント発生率は100患者-年あたり、それぞれ1.24と1.30。ジクロフェナクと比較したエトリコキシブのハザード比は0.95(95%信頼区間0.81-1.11)で非劣性が示された。血栓性心血管イベント既往者では、どちらの薬剤投与群でもイベント発生率が最も高く、非既往群の3倍を超えた。

 うっ血性心不全はまれだったが、90mgエトリコキシブ群でその頻度は高かった。また90mg群では、浮腫による治療中止の頻度が高かった。また、60mg群、90mg群の両方で、高血圧による治療中止の頻度が高かった。一方、ジクロフェナク群では、消化管と肝臓の有害事象による服用中止の頻度が高かった。

 上部消化管イベント(穿孔、出血、閉塞、潰瘍)は、エトリコキシブ群の方がジクロフェナク群より有意に少なかった(100患者-年当たり0.67対0.97、ハザード比0.69)。しかし、重症の上部消化管イベント(穿孔や閉塞をもたらす出血または潰瘍)の発生率は、エトリコキシブ0.30、ジクロフェナク0.32で同等だった。

 これらの結果からCannon氏は、「長期的な使用の場合には、エトリコキシブの血栓性心血管イベント発生率はジクロフェナクと同等」と結論づけた。心血管疾患患者などハイリスク者に鎮痛薬を処方する場合、こうした有害事象のリスクと利益のバランスを考えることが重要と言えそうだ。

 AHA2006での発表に合わせ、本研究の原著論文が2006年11月13日付けでLancet誌電子版に掲載された。論文の原題は「Cardiovascular outcomes with etoricoxib and diclofenac in patients with osteoarthritis and rheumatoid arthritis in the Multinational Etoricoxib and Diclofenac Arthritis Long-term (MEDAL) programme: a randomised comparison」。アブストラクトはこちらから閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。