米デューク大のWei Jiang氏

 心不全患者でうつ状態の人に対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)を投与しても、死亡率の増加にはつながらないとする研究結果が得られた。これまで、心不全患者への抗うつ薬投与が、死亡率増加につながる可能性を示す研究結果が発表されているが、いずれもうつ状態についてのリスク補正は行っていない。そのため、抗うつ薬投与がうつ病の交絡因子である可能性を排除できなかった。

 これは、米デューク大のWei Jiang氏が、11月13日の一般口演で発表したもの。心不全患者にはうつ状態に陥る人が少なくないにもかかわらず、医師の間では抗うつ薬の投与に伴うリスクを懸念し、積極的な治療をしたがらない場合が少なくない。今回の研究結果は、そうした実態の改善につながりそうだ。

 Jiang氏らは、1997〜2003年にかけて、1006人の心不全患者について、平均2.7年、追跡調査を行った。被験者は、ニューヨーク心臓協会(NYHA:New York Heart Association)の分類でクラス2以上、または、左心駆出率(LVEF)が35%以下だった。調査開始時点で、被験者の30%が、ベックのうつ病調査票(BDI:Beck Depression Inventory)でスコア10以上のうつ状態だった。また、そのうち抗うつ薬を服用していたのは16.1%で、これはBDIスコア10以上の人の24.5%、そうでなかった人の12.5%だった。調査期間中、うつ状態の人の53.3%、そうでない人の38%が死亡した。

 うつ状態などのリスク補正後の死亡リスクについてみると、抗うつ薬投与を行った場合とそうでない場合では、同リスクに有意差は見られなかった(ハザード比1.20、p=0.327)。SSRI投与に絞って比べたところ、両群の同リスクに差がないことは、より明らかだった(ハザード比1.06、p=0.784)。一方、うつ状態の人では、そうでない人に比べ、死亡リスクはおよそ1.39倍だった(ハザード比1.39、p=0.003)。なおリスク補正前には、抗うつ薬投与群の死亡に関するハザード比は、1.32(p=0.029)だった。

 Jiang氏は、心不全患者に対するSSRI投与は死亡率を増加させないようだ、と結論付けた。また、SSRI投与が逆に死亡率を低下させるかどうかについては、今後の研究が必要だとしている。

 同氏は、被験者でうつ状態だった人のうち75.5%もが、抗うつ薬を服用していなかった点について触れ、「心不全患者のうつ状態に対する、より適切な治療が必要ではないか」と指摘した。