心不全の患者に対し、埋め込み式の左心室圧測定装置を使い、1日2回、測定値に合わせて利尿薬フルセミド)の投与量を調節することで、心機能代償不全を引き起こす左心室圧の上昇が減り、利尿薬の投与量も減少するなど、より効果的に心不全のコントロールができる可能性を示す研究結果が明らかになった。ニュージーランド クライストチャーチ病院のJay Ritzema氏が、開発中の「Heart POD」に関する初の臨床試験結果を13日の一般口演で報告したもの。

 対象とした被験者の参加条件は、ニューヨーク心臓協会(NYHA:New York Heart Association)分類でクラス3または4(中等度から重症)の心不全患者で、最近12カ月以内に1回以上、心不全のために入院または救命救急室を訪れ、非経口治療を要したことなどとした。被験者数は、今回の発表データ集計時には17人だった。

 被験者は、当初約3カ月間(平均99日間)を対照期間とし、左心室圧測定は行ったが、結果は医師には知らせず、従来通り、担当医の指示で決めた量の利尿薬を投与した。続く平均145日間は、Heart PODで1日2回、左心室圧を測定し、測定値は即座に患者の個人用携帯情報端末に送信、それに基づいてフルセミドなどの投与量を決めた。

 具体的には、左心室圧が6mmHg以下だとフルセミドを投与せず、7〜12mmHgで40mg、13〜20mmHgで80mg、21〜29mmHgで80mgを1日2回、30mmHg以上では80mgを1日2回服用に加え、30mgの一硝酸イソソルビドを投与し、さらに医師に連絡をした。

 その結果、左心室圧が25mmHgを超えた頻度は、対照期間では14.1%だったのに対し、介入期間には4.1%に留まった(p<0.0001)。また、心不全による入院率も、治験開始前12カ月では1.4回/患者・年だったのに対し、介入期間には0.08回/患者・年と大幅に減った。

 また、フロセミドの投与量について比較したところ、介入期間の方が対照期間よりも少なくなっていた。この点についてRitzema氏は、従来の方法では、息苦しくなってからフルセミド量を増やすなどの対応をしていたのに対し、Heart PODを用いた場合、左心室圧が上昇した時点で、素早く対処できたからではないかとしている。

 一方、これまでは血圧が低くなり過ぎることから投与量を抑えざるを得なかったアンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬については、介入期間に、対照期間よりも多く投与することができた。これは、介入期間には、血圧値が低くなるのを防ぐことができたためという。

 Ritzema氏は、本研究について「Heart PODを心不全患者に装着することで、心機能代償不全や入院を予防できる可能性を示す研究結果だ」と結論づけた。会場からは「この装置が承認された場合、装着対象となるのはどんな属性の患者か」との質問があり、同氏は「(今回の臨床試験では)NYHAクラス3〜4の重症心不全患者で、非常に良好な結果が得られた。特に植え込み型電気的除細動装置(ICD)を装着する場合には、同時にHeart PODの装着も行うとよいかもしれない」とコメントした。