帝京大学消化器内科の山本貴嗣氏

 抗血小板薬の投与で消化管出血リスクが増大することはよく知られており、生検など観血的な内視鏡処置を行う場合、処置前後の休薬が推奨されている。抗血小板薬の服用者に対して、上部消化管内視鏡検査を実施し、生検時の出血時間を観察した前向き介入試験の結果、低用量アスピリン服用者は、他の抗血小板薬を服用している群に比べても、有意に出血時間が長いことが分かった。帝京大学消化器内科の山本貴嗣氏らの研究成果で、5月30日から6月4日まで、米シカゴで開催された米国消化器内視鏡学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)のポスターセッションで報告された。

 山本氏らは、2007年5月から2008年4月までに、H.Pylori感染の検査を含む上部消化管内視鏡検査を勧められた虚血性心疾患患者で、(1)低用量アスピリン、シロスタゾール、チクロジピン、クロピドグレルのいずれかを常時服用している、(2)他の抗血小板薬、抗凝固薬を処方されていない、(3)過去に出血傾向を示したことがない、の3条件を満たし、インフォームドコンセントが得られた18人を対象とした。

 対象者は67-81歳、男性10人、女性8人。全員が虚血性心疾患の有病者で、対象者のうち8人が低用量アスピリン(100mg/日以下)、5人がシロスタゾール(200mg/日)、3人がチクロジピン(200mg/日)、2人がクロピドグレル(200mg/日)の投与を受けていた。このうち、チクロジピン、クロピドグレル投与群はチアノピリジン系投与群としてまとめた。

 対象者にはルーチンの内視鏡的観察を行った後、H.Pylori検査を目的として生検を実施した。生検は検体サイズを2〜3mmとした。生検後、30秒ごとに20mLの水で生検部を洗浄しながら、10秒以内の出血が視認できなくなるまでを出血持続時間とした。なお、本研究では、血流がさほど豊富でなく、万一の際も止血しやすい胃前庭部における生検を実施することとし、倫理委員会の承認を得た。

 結果は、低用量アスピリン群は、シロスタゾール群、チアノピリジン群に対し、出血時間が有意に長かった(p<0.05)。低用量アスピリン群では最長出血時間は8分間で、最頻値は4分間、チアノピリジン群は3.5分間が最も長く、最頻値は2.5分間、シロスタゾール群は2.5分間が最も長く、最頻値は2分間/2.5分間だった。


 米国消化器内視鏡学会(ASGE)では、内視鏡検査を実施する際に抗血小板薬を休薬しない方向で、ガイドライン改定が議論されている。日本では現在、3〜5日の休薬を実施しているが、休薬をするべきでないという議論もある。「こうした議論の根拠となる数値化されたデータはこれまでなかった」(山本氏)という。

 山本氏はさらに、「たしかに、生検など消化管における侵襲的処置で生命にかかわることはほとんどなく、一方で休薬による心血管リスクの増大を考慮して、日本でも休薬しない方向に動きつつある。しかし、注意は必要だ。特に大きな処置になってくると出血も増えるので、抗血小板薬によるリスク増加は意識する必要がある」と指摘していた。