ベルギー・Leuven大学のSebastien Kindt氏

 機能性ディスペプシアFD)には、食後の不快症状が強いサブタイプと、痛みが強いサブタイプがあり、病理学的な基盤が異なると推測されている。両サブタイプの胃排出能貯留能、知覚を比較した新たな研究で、食後症状が強いタイプでは、胃の貯留能が有意に低いことが分かった。しかし、胃排出能の低下や知覚過敏については、どちらのサブタイプとの関連も見い出せなかった。ベルギー・Leuven大学のSebastien Kindt氏らの研究成果で、米シカゴで開催された米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)の一般口演で報告された。

 FDの国際的な診断基準であるROME III基準では、食後の胃もたれや早期膨満感が強い食後愁訴症候群PDS)と、胃の痛みを主症状とする心窩部痛症候群EPS)という2つのサブタイプを規定している。前者には胃排出能の遅延・低下や貯留能の低下などの関与が、後者には酸に対する知覚亢進やH.pylori感染、NERD(non-erosive reflux disease)などの関与が考えられているが、推測の域を出ない。

 そこでKindt氏らは、新たに発症したFD患者に対する前向き研究により、推測される機序と症状の関連性を明らかにしようと試みた。

 対象は、Leuven大学病院をFDで初めて受診した連続69症例である。うち、52例が女性、平均38±1歳、平均BMIは21.4±0.5kg/m2であり、本研究への組み入れ時までの平均体重減少量は10.2±1.0kgだった。

 Rome III基準に則ってPDSと診断された患者の割合は75%、EPSと診断された患者は59%だった。全体の57%は両サブタイプに該当、同21%は、どちらのサブタイプにも分類し得なかった。

 Kindt氏らは、これらの患者全例に14C-オクタン酸呼気テストと13C-グリシン呼気テストを行い、胃排出能を評価した。また、バロスタット法にて胃の貯留能と知覚を評価した。

 その結果、PDS群は非PDS群に比べて、胃の貯留能が有意に低かった(109±19mL vs 173±24mL、P=0.03)。また、非PDS群では、貯留能に異常がある患者は13%しか認められなかったのに対してPDS群では43%に上り、後者が有意に多かった(P=0.04)。これに対し、EPS群と非EPS群、PDS+EPS群と非PDS・非EPS群との比較では、いずれも貯留能に違いはみられなかった。

 また、PDS群、EPS群の少なくとも一方に該当する患者では、どちらにも該当しない非PDSかつ非EPSの患者と比べ、痛みを感じる胃容積の閾値が有意に高かった(P=0.05)。しかし、それ以外の検討項目(知覚、胃排出能)については、どのサブグループ間でも有意な差を認めなかった。

 以上のように、PDSの病態が胃の貯留能力の障害と関連していることが確認された一方で、同じくPDSとの関連が推測された胃排出能の低下や、EPSとの関連が推測された知覚亢進については、どのサブタイプにおいても有意な関連性が認められなかった。Kindt氏は、「機能性ディスペプシアの発症機序については、さらなる検討が必要だ」と述べた。