オーストラリア・Royal Adelaide病院のMontri Gururatsakul氏

 消化性潰瘍の中でも特に危険な出血性潰瘍の発症を防ぐためには、その危険因子を知る必要がある。オーストラリア・Royal Adelaide病院のMontri Gururatsakul氏は6月2日、米シカゴで開催中の米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)のポスターセッションで、ここ10年の消化性潰瘍の特徴と危険因子について発表。高齢とアスピリン使用が出血性潰瘍の危険因子であることを報告した。

 近年、出血を伴わない単純な消化性潰瘍(非出血性潰瘍)の発症頻度は減少しつつあるが、出血性潰瘍の頻度はほとんど変わっていないとされる。これは、出血性潰瘍は自覚症状を伴わないことが多く、突然の吐血や下血などで発症に気づくためと考えられているが、これを裏付けるデータは不足している。

 そこでGururatsakul氏らは、1997年と2002年、2007年にRoyal Adelaide病院を受診した消化性潰瘍患者のデータを抽出し、非出血性潰瘍、出血性潰瘍それぞれの特徴と危険因子を明らかにしようと試みた。

 同院における各年度の非出血性潰瘍患者数は、1997年が129例、2002年が68例、2007年が43例と、年を追うごとに減少していた。一方、出血性潰瘍患者は、1997年が106例、2002年が121例、2007年が99例であり、ここ10年の間ほとんど変化していなかった。

 非出血性潰瘍では、患者数が減少する一方で、1997年には11%にすぎなかった無症候性患者の割合が年々増加し、2007年には48%を占めるまでになった。これに対し、出血性潰瘍における無症候性患者の割合は、一貫して7割前後を占めていた。これは、ここ10年間における非出血性潰瘍患者の減少は、主として有症状患者の減少に基づくものであることを示唆するものだ。

 非出血性潰瘍患者に比べ、出血性潰瘍患者の平均年齢は14歳ほど高齢だった(P<0.01)。また、無症候性患者の年齢は、非出血性潰瘍、出血性潰瘍とも、有症状患者より有意に高齢であった(ともにP<0.01)。

 また、非出血性潰瘍患者におけるNSAIDs/低用量アスピリンの使用頻度は、どの測定年でも20%程度だったが、出血性患者では非出血性潰瘍患者よりも有意に高く(P<0.01)、しかも、1997年の51%から2007年の71%へと、年を追うごとに増加していた(P<0.02)。

 アスピリンの使用は、COX-2阻害薬ヘパリンワルファリンクロピドグレルなど、他の出血危険因子候補を独立変数に加えた多変量解析においても、有意な出血危険因子であることが確認された(RR 1.230、P=0.047)。しかし、NSAIDsの使用については独立した危険因子と認められなかった(RR 1.130、P=0.081)。

 さらに、自覚症状を従属変数とした多変量解析では、アスピリンの使用は症状をマスクする危険因子であることも確認された(RR 0.649、P=0.001)。また、喫煙は逆に症状を顕在化させる危険因子であることが示された(RR 1.255、P=0.013)。

 以上より、無症候性であることが多い出血性潰瘍は、非出血性潰瘍のように近年の酸分泌抑制薬の進歩などの恩恵を受けることが少なく、ここ数年間にわたって発症数はほとんど減少していないことが裏付けられた。また、高齢とアスピリンの使用が出血性潰瘍の危険因子であることが示唆された。