食道アカラシアの治療法として、内視鏡的に筋層を切除する新たな術式が有望とする症例報告があった。6月2日、米シカゴで開催されている米国消化器内視鏡学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)のトピックフォーラムで、昭和大学横浜市北部病院消化器センター准教授の井上晴洋氏が発表した。

 食道アカラシアは、食道の蠕動運動が障害されて嘔吐や胸痛を来す。未だ原因不明の疾患だ。罹患年齢は比較的若く、治療はカルシウム拮抗薬などの服用か、内視鏡的バルーン拡張術、または食道から胃にかけて筋層の一部を切除する腹腔鏡下手術が行われてきた。

図1 POEM術式の模式図(図版提供:井上氏)

 井上氏らは以下のような手順で手術を行った(図1)。まず、口から内視鏡を挿入し、食道粘膜表面から粘膜下層まで切開する。そのまま粘膜下層内を食道と胃の接合部まで、いわばトンネルを掘るように内視鏡を進めていく。接合部近辺まで到達した後、筋層を輪状に切開剥離していく。剥離後、内視鏡を挿入した粘膜表面をクリップなどで閉じる。

 病変部へのアプローチ方法としては、消化管壁の切開には至らないものの、NOTES(natural orifice translumenal endoscopic surgery:経管腔的内視鏡手術)と似ていると言える。井上氏はこの手術法を「Per-Oral Endoscopic submucosal Myotomy(POEM)」と名付けた。

 井上氏は、院内倫理委員会の承認を得た上で、この手術を4人の患者に行った。いずれもグレードII/IIIの食道アカラシアで、罹病期間は2〜10年。手術後、全例で食道の通過障害が改善し、臨床症状も消失した。下部食道括約筋(LES)圧の平均値は、手術前の32.6mmHgから9.3mmHgへと改善した。合併症は特にみられなかった。

 井上氏は「バルーン拡張術は、複数回にわたって行う必要があるなど限界があった。腹腔鏡下手術は、小さいとはいえどうしても腹部に傷が残る。今回われわれが行ったPOEM法は、まだ短期間しか経過をみていないものの、アカラシアの治療を一変させる画期的な治療法と考えている」と結んだ。