カナダ・McMaster大学のAvantika Marwaha氏

 心窩部痛早期飽満感など、上腹部症状を中心としたディスペプシアは、有病率は高いものの、原因はいまだ不明であり、危険因子にも諸説がある。カナダ・McMaster大学のAvantika Marwaha氏らは、2万報以上の論文のシステマティック・レビューメタ解析を実施し、喫煙アスピリン/NSAIDの使用、H.pylori感染、女性であることの4つが有力な危険因子として浮上したことを明らかにした。研究成果は、米シカゴで開催中の米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)の一般口演で報告した。

 同氏らはまず、MEDLINE、EMBASEの両データベースを利用し、2008年8月までに収録された全文献を検索、ディスペプシアの有病率について示した横断研究、ケースコントロール研究、コホート研究、無作為化比較試験に関する2万3457報の文献を抽出した。

 次に、2人の査読者がこれらの論文を査読し、50人以上の成人を対象とした研究であること、地域や職場、健診機関、プライマリケア医などでなされた研究であることを条件として2次検索を行った。さらに、第3の査読者がその適格性を判断することにより、241報の文献が同定された。これらはすべて横断研究での報告であった。

 続いてMarwaha氏らは、これらの文献から、性差、H.pylori感染、アスピリン/NSAID、社会経済的ステータス(SES)、喫煙、アルコール摂取に関するデータを抽出・集積してメタ解析を行い、それぞれの要素がディスペプシア有病率に及ぼす影響を検討した。

 その結果、性差については64研究、12万9283例(うち女性52.2%)のデータが集積された。女性がディスペプシアを呈するオッズ比(OR)は1.28(95%CI:1.17-1.39)であり、性差はディスペプシアの有意な危険因子であることが示された。

 同様に、他の因子についても9〜32研究、2万4282〜3万6825例のデータを集積し、H.pylori感染(OR=1.21、1.08-1.36)、アスピリン/NSAIDの使用(OR=1.45、1.25-1.68)、喫煙(OR=1.47、1.35-1.60)の各要素が有意な危険因子として同定された。一方、SESとアルコール摂取については、ディスペプシアとの間に有意な相関は認められなかった。

 もし、今回同定された4つの危険因子がそれぞれ独立したディスペプシアの病因であるとすれば、変更不能な因子である性差を除く3つの要素(喫煙、アスピリン/NSAIDの使用、H.pylori感染)を是正することにより、ディスペプシアの有病率は29%も減少する計算になるという。

 しかし、今回のメタ解析では、個々の試験間の不均一性の尺度であるI2値が46.1%(喫煙)〜88%(アルコール摂取)ときわめて高く、解析結果の妥当性に疑問が残った。そのためMarwaha氏らは、不均一性の原因として、(1)試験ごとの診断基準の違い、(2)西半球と東半球の違い、(3)地域ベースの研究とその他のセッティングでなされた研究の違い、の3つの可能性を考え、それぞれの影響を調べたが、明らかな原因は同定できなかったという。

 また、H.pylori感染についても、もともとの感染率が高い日本と欧米諸国では異なる結果になることも予想され、ディスペプシアの病因の解明には、なお課題が残されている。