Chinese University of Hong KongのFrancis K. L. Chan氏

 低用量アスピリン下部消化管出血の初発リスクを高めることが報告されているが、継続投与によって再発リスクも高めるかどうかは明らかではない。約400例の出血既往者を8年間にわたって追跡したChinese University of Hong KongのFrancis K. L. Chan氏は、出血後に低用量アスピリン投与を再度受けることがなかった患者に比べ、投与を再開した患者の再出血リスクは約4倍も高かったことを、米シカゴで開催中の米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)の一般口演で報告した。

 同氏らは、(1)下血/血便を認める前1週間以内に低用量アスピリンを服用、(2)医師や検査技師が下血/血便を確認、(3)吐血なし、(4)胃部からは確認できる出血がない、(5)大腸癌や痔の出血ではない、(6)NSAIDs、アスピリン以外の抗血小板薬、抗凝固薬、ステロイドを服用していない、の6項目すべてを満たした場合を、「低用量アスピリンに起因する下部消化管出血」と規定した。

 2000年1月〜2007年12月に、黒色便または血便を訴えて香港・Prince of Wales病院を受診した2329例の患者のうち、上記の基準に基づいて低用量アスピリンに起因する下部消化管出血と診断された患者は415例であり、うち405例が本試験への参加に同意した。

 これらの患者は担当医師の裁量に基づいて、低用量アスピリン(ASA)群(n=295)と対照群(n=110)に割り付けられ、前者にはアスピリン80〜160mg/日が投与された。両群の年齢・性別はほぼ同等だったが、グレード3/4の出血を呈した患者の割合は、対照群の方が多かった(ASA群56% vs 対照群72%)。一方、喫煙歴と飲酒歴のある患者の割合はASA群のほうが多かった(喫煙:27% vs 9%、飲酒:21% vs 6%)。

 追跡の結果、ASA群では89例の患者に出血が疑われる所見(黒色便/血便もしくは貧血)がみられた。このうち34例は上部消化管出血、24例は非消化管出血性の貧血、31例が下部消化管出血と判断された。一方、対照群では35例に出血が疑われる所見がみられたが、その多くは上部消化管出血(22例)と非消化管出血性の貧血(9例)であり、下部消化管出血は4例のみであった。

 下部消化管出血の8年間の累積発症率は、ASA群が18.0%、対照群が4.3%であり、ASA群におけるリスクは対照群のほぼ4倍だった(HR=3.95、95%CI:1.39-11.20、P=0.005)。すなわち、低用量アスピリンは下部消化管出血の初発リスクを高めるだけでなく、継続投与により、再発リスクも約4倍に高めることが示唆された。

 なお、本試験は無作為化比較試験ではないため、出血リスクが高いと思われる患者が対照群で多くなるというセレクションバイアスが働いた可能性は否めない。事実、対照群にはグレード3/4の出血の既往のある患者が多かったことは前述のとおりである。それにもかかわらず、ASA群において再び下部消化管出血を生ずる頻度が高かったことから、「今回の結論はきわめて妥当なものだろう」とChan氏は述べた。