NSAIDと血小板凝集を抑えるアスピリン消化性潰瘍(PU)の強力な危険因子である。両者の併用には不安を覚える人が少なくないだろう。関節リウマチ(RA)患者におけるNSAID・低用量アスピリン使用とPU発症の関連を検討した日本医科大学消化器内科の三宅一昌氏らは、両剤併用時のPU発症率がNSAID単剤使用時と変わりないこと、半面、潰瘍の「出血しやすさ」が上昇している可能性があることを確かめ、米シカゴで開催されている米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)のポスターセッションで報告した。

 心血管疾患(CVD)予防薬としての低用量アスピリンの使用が急速に普及するなか、CVDハイリスク者が多いRA患者の間でも同剤への期待感が高まっている。しかし、RA患者の多くが長期連用するNSAIDにはPUリスクの上昇という避け難い副産物がある。そこで三宅氏らは、RA連続症例のレトロスペクティブな解析を行い、NSAIDと低用量アスピリンとの併用がPUの発症と出血傾向に及ぼす影響を検討した。

 対象は、2003年2月〜2007年3月に日医大を受診したRA患者のうち、直近3カ月以内にプロトンポンプ阻害薬(PPI)とプロスタグランジン製剤(PG)の投与歴がなく、少なくとも3カ月以上処方内容に変更のなかった患者232例(男性25例、女性207例、平均61.7±0.6歳)とした。

 このうち、NSAIDとアスピリンのいずれも服用していなかった患者は25例(C群)、NSAID単剤を服用していた患者は174例(N群)、NSAIDとアスピリンを併用していた患者は11例(N+A群)、2種類のNSAIDを服用していた患者は22例(N+N群)だった。

 上記4群で内視鏡的にPUが確認された患者は、それぞれ0例(0%)、34例(19.5%)、2例(18.2%)、10例(45.5%)で、N群のPU有病率はC群より有意に高く(P<0.01)、N+N群はN群よりもさらに有病率が高かった(P<0.05)。一方、N群とN+A群間には有意な差は認められなかった。

 これらの結果から、NSAID長期連用RA患者におけるさらなるNSAIDの併用はPUリスクを倍増させるのに対し、低用量アスピリンの併用はリスクを高めないと考えられた。

 しかし、N+A群でPUが認められた2例の患者では、ヘモグロビン値(Hb)が他群のPU有病者に比して有意に低値だった(対N群、対N+N群ともP=0.01)。また、同じN+A群内のPU非有病者との比較でも、これらのマーカーには有意または有意に近い差が認められた(Hb:P=0.055、MCV:P=0.029)。これに対し、N群やN+N群では、PUの有無にかかわらず出血マーカー値に差はみられなかった。

 以上より、NSAIDとアスピリンの併用は、NSAIDとNSAIDの併用のようにPUリスクを高めることはないが、潰瘍の「出血しやすさ」は上昇している可能性が示された。三宅氏らは、「NSAID+アスピリン併用患者では、たとえ無症候性のPUであっても潜在的な出血により貧血をもたらす可能性がある」として注意を促した。

 低用量アスピリン服用患者は今後ますます増加すると予想される。通常の出血性潰瘍に比べて止血が困難との報告もあるから、注意が必要だろう。

 なお今回の検討で対象者が用いていたNSAIDは、ほとんどが非選択的阻害薬だった。今後、COX-2選択的阻害薬の影響についても明らかになることを期待したい。