スペイン・サバデル病院のEnric Brullet氏

 出血性消化性潰瘍に対する緊急内視鏡治療後の再出血は患者の生命予後を左右するため、高い精度でリスクを予測する方法の確立が望まれている。スコアによる評価と、内視鏡医の主観に基づく臨床的評価のリスク予測精度を比較する多施設共同試験を進めているスペイン・サバデル病院のEnric Brullet氏らは予備試験の成績を提示。スコアによる評価が臨床的評価に近いレベルだったことを示した。研究成果は5月30日から6月4日まで米シカゴで開催中の米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)で報告された。

 出血性消化性潰瘍患者の再出血や死亡リスクの評価には、Rockallスコアをはじめ、Baylor、Cedars-Sinai、Glasgow-Blatchfordなど、評価項目(Hb値、収縮期血圧、内視鏡所見など)の異なる複数のスコアが用いられているが、それらの精度を相互に比較した研究はほとんど行われていない。また、内視鏡医の主観に基づく臨床的評価に対する劣勢・優越性も不明だった。そこでBrullet氏らは、上記4スコアによる評価と臨床的評価の精度を比較する3施設共同の前向き試験を計画した。

 対象は、上部消化管出血で緊急内視鏡検査を施行したところ、ハイリスク症例の特徴である凝血付着、非露出血管、露出血管のいずれかの所見が認められ、内視鏡によるエピネフリン+ポリドカノール注入、またはエピネフリン注入+クリップ止血術を受けた患者136例である。

これらの患者に対し、まず内視鏡医が主観に基づくリスク評価を実施した。次に、Rockall、Baylor、Cedars-Sinai、Glasgow-Blatchfordの各スコアをカウントし、それぞれのスコアが≧3、≧3、>10、>7の場合をハイリスクと判定した。

 エンドポイントは、内視鏡治療後30日以内の再出血と死亡とした。追跡の結果、136例中19例(14%)が再出血を起こし、7例(5%)が死亡した。再出血に対する各評価法の陰性予測度(NPV)は91〜96%で、4〜9%の患者の再出血リスクを見逃していた。また、曲線下面積(AUC:area under curve)は0.661〜0.695と、どの方法で評価した場合もほとんど差がなく、かつ不十分な数値だった。

 一方、死亡の予測精度は、臨床的評価とRockall、Cedars-Sinaiスコアによる評価は、感度が100%、NPVも100%と良好だった。しかし、陽性予測度(PPV)はいずれも6〜16%と低かった。AUCについては各評価法に大きな差はみられなかった(0.701〜0.874)。

 以上より、少なくとも今回の予備試験の結果からは、出血性消化性潰瘍患者への緊急内視鏡治療後の再出血リスクと死亡リスクに対する現行スコアの評価精度は、臨床的評価と大差なく、特に、再出血リスクの予測には不十分であることが示された。