膣から挿入した内視鏡で虫垂を切除するNOTES(ノーツ)による手術を、既存の腹腔鏡による手術と比較したところ、試行段階の少数例の比較ながら、痛みが少なく、療養期間も大幅に短縮できたという。ドイツSuedstadt病院のJoern Bernhardt氏らが、米シカゴで5月30日から6月4日まで開催中の米国消化器内視鏡学会(第40回米国消化器病週間 DDW2009)で報告した。

 NOTES(natural orifice translumenal endoscopic surgery:経管腔的内視鏡手術)は、口、肛門、膣など人体の自然孔から内視鏡を挿入し、胃壁や膣壁などを切開して、腹腔内臓器にアプローチする術式。体表の傷を減らすことができるのが最大の特徴。日本でも大分大学、大阪大学などで臨床応用が始まっている。

 Bernhardt氏らは、NOTESによる虫垂切除の臨床導入に当たり、既存の腹腔鏡手術と比較する前向きの介入試験を実施した。2007年10月から2008年11月までに虫垂切除を行った76人の女性のうち、同意がとれた40人の参加を得た。このうち、3人(平均29歳)には経膣NOTES、37人(平均38歳)には既存の腹腔鏡手術を実施した。ドイツではNOTESの臨床応用は未承認のため、本研究はロストック大学の倫理委員会の承認を経て行われた。

 NOTESによる手術では、鉗子2本を挿入可能な2チャンネルの胃内視鏡を流用した。虫垂切除には3本の器具挿入が必要であり、NOTESでは、膣から挿入した軟性内視鏡から2本、臍から挿入した腹腔鏡から1本を挿入した。

 術後にアンケートを実施、NOTESで手術を行った3人全員と腹腔鏡で行った37人中16人から回答を得た。その結果、全般にNOTESによる手術を受けた患者の方が、QOLが良好だった。

 食事摂取では、NOTES群、腹腔鏡群が手術当日対翌日、腸機能の回復は翌日対2日目、痛み(1-10)は、翌日に3対5.4、3日目に2対3.1、7日目に1対1.7だった。また、健康が完全に回復したと患者が感じたのは、NOTES群で7日目、腹腔鏡群では26日目と大きな差がついた。経膣ということで、膣壁の障害が気になるが、性的行為の再開は、NOTES群が16日目、腹腔鏡群は20.5日目で、NOTES群が早かった。

 Bernhardt氏らはこれらの結果から、「軟性内視鏡を用いた経膣NOTESの試行は安全とみられる。ただし今後、統計的に意味のある検討が必要」と指摘した。