米Scripps Whittier Diabetes研究所のAthena Philis-Tsimikas氏

 運動を行うことにより、糖の必要量が増加し、かつインスリン感受性が高まるため、糖尿病患者では運動が低血糖発現のリスクとなる懸念がある。米Scripps Whittier Diabetes研究所のAthena Philis-Tsimikas氏らは、持効型溶解インスリンアナログ製剤インスリン デグルデク(以下、デグルデク)による運動に関連する低血糖の発現について検討したところ、運動に関連する低血糖を発現した患者の割合はインスリン グラルギン(以下、グラルギン)と同程度だったと、6月21〜25日にシカゴで開催された米国糖尿病学会ADA2013)で報告した。

 Philis-Tsimikas氏らは今回、グラルギンを対照薬とするデグルデクの7件の第3相臨床試験を用いてpost-hoc解析を行った。試験はいずれも空腹時血糖値が目標値に達するようにインスリン投与量を調節するtreat to target法を用いたランダム割り付け、オープンラベル試験で、投与期間は26週間または52週間だった。

 患者は低血糖を発現した際には、運動との関連も含めて記録することとしていた。その報告に基づき、全ての低血糖(第三者による処置が必要な低血糖および血糖値が56mg/dL未満の低血糖と定義)を発現した患者の中で、運動に関連する全ての低血糖(以後、運動関連の低血糖)の発現した患者の割合を算出し、デグルデク群とグラルギン群で比較した。

 なお、夜間低血糖は、全ての低血糖のうち午前0時1分から5時59分の間に発現したものとした。

 7件の試験のうち、1型糖尿病患者を対象とした試験が2件、2型糖尿病患者を対象とした試験が5件で、計4714例(デグルデク群3288例、グラルギン群1426例)を本解析の対象とした。1型糖尿病患者(いずれの患者も強化インスリン療法を実施)で、全ての低血糖を1回以上発現した患者数は1072例、運動関連の低血糖を1回以上発現した患者数は856例だった。強化インスリン療法実施中の2型糖尿病患者で、全ての低血糖を1回以上発現した患者数は815例、運動関連の低血糖を1回以上発現した患者数は417例で、基礎インスリンと経口血糖降下薬の併用療法(BOT)実施中の2型糖尿病患者では、それぞれ1159例と246例だった。

 これをデグルデク群とグラルギン群に分け、全ての低血糖を発現した患者の中で運動関連の低血糖を発現した患者の割合を比較すると、1型糖尿病ではデグルデク群79.8%(運動関連の低血糖を発現した患者数614例/全ての低血糖を発現した患者数769例、以下同様)、グラルギン群79.9%(242例/303例)、強化インスリン療法実施中の2型糖尿病患者では、デグルデク群51.1%(311例/609例)、グラルギン群51.5%(106例/206例)、BOT療法実施中の2型糖尿病患者では、デグルデク群20.9%(163例/779例)、グラルギン群21.8%(83例/380例)だった。いずれも両群間で運動関連の低血糖を発現した患者数の割合に大きな違いはなかったが、強化インスリン療法を実施している患者で割合が高かった。

 夜間低血糖の検討では、1型糖尿病患者ではデグルデク群31.1%(178例/573例)、グラルギン群29.9%(69例/231例)、強化インスリン療法実施中の2型糖尿病患者ではデグルデク群12.1%(36例/298例)、グラルギン群15.1%(18例/119例)、BOT療法実施中の2型糖尿病患者ではデグルデク群10.7%(25例/233例)、グラルギン群10.5%(15例/143例)だった。夜間低血糖でも両群間で大きな違いはなかったが、運動に関連する夜間低血糖を発現した患者の割合は1型糖尿病患者で高い傾向だった。

 この結果から、Philis-Tsimikas氏は、「デグルデクは、運動に関連する低血糖を報告する患者の割合をグラルギンと比較して増加させることはなかった。ただし、強化インスリン療法を実施している患者ではいずれの製剤でも割合が高かった。そうした患者は運動の強度や運動時間の長さに応じて、Bolusインスリンの用量や投与タイミングを調整する必要があるだろう」と提言した。