オーストラリアMonash UniversityのC.Moran氏

 糖尿病患者においては、脳血管疾患および神経変性の2つの経路から認知症との関連性が示唆されているが、その詳細については明らかになっていない。2型糖尿病患者群(T2DM)と非糖尿病患者群を対象に、認知機能検査とMRI脳画像検査を実施した結果、視空間認知機能の低下、および海馬や大脳灰白質の容積減少とT2DMとの有意な関連が示された。6月21日から25日までシカゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2013)で、オーストラリアMonash UniversityのC.Moran氏らが発表した。

 対象は、Southern TasmaniaのNational Diabetes Service Scheme Databaseに登録されている55歳以上の2型糖尿病患者350人(DM群、平均年齢67.8歳、平均罹患期間7年)、および非糖尿病患者363人(非DM群、平均年齢72.1歳)。

 認知機能については、Standardized Battery of neuropsychological testsを用いて視空間認知力、記憶力、処理スピード、遂行能力などを調べた。MRI脳画像検査を実施し、梗塞および微小出血の数、白質病変、海馬、白質、灰白質の容積を測定した。

 重回帰分析によってT2DMと認知機能との関連を調べたところ(年齢、性別、学歴、うつで補正)、認知機能の中で「視空間認知力」との有意な関連が見られた(β係数:−0.83、95%信頼区間[95%CI]:−1.00〜−0.66、P<0.001)。

 また、同様にT2DMとMRIで測定した脳画像因子との関連を見ると、灰白質、白質、右海馬、左海馬の容積、および梗塞数などが有意な説明変数となった(P<0.05、年齢、性別、全脳容積、うつ、高血圧、脳卒中、虚血性心疾患、BMI、喫煙、飲酒で補正)。

 そこで、上記のT2DMと認知機能の重回帰分析において、年齢、性別、学歴、うつに加えて、海馬と灰白質の容積の補正を加えたところ、視空間認知力とT2DMの関連におけるβ係数は−0.83から−0.47に減少した。さらに、白質の容積、梗塞数、白質病変の容積、微小出血数を1つずつ補正に加えていったが、β係数は−0.47のまま変わらなかった。

 Moran氏は、「認知機能においては視空間認知力の低下が、大脳画像因子においては海馬・灰白質・白質の容積減少、梗塞数が、T2DMと有意に関連していることが明らかになった」と結論。さらに、「視空間認知力の低下とT2DMとの関連は、海馬と灰白質の萎縮の2つでその多く(〜40%)を説明でき、これらの部位はアルツハイマー病の主な障害部位と同じだった。よって糖尿病に関連する認知症は、やはり神経変性を介したものである可能性が高い」と考察した。