米Temple UniversityのElias S. Siraj氏

 心血管疾患リスクが高い2型糖尿病患者への高用量インスリン投与は、心血管死亡リスクの増大には関与しないことが示された。心血管疾患リスクが高い2型糖尿病患者に対し、厳格な血糖管理をすることでアウトカムが改善するかどうかを検証した大規模臨床試験、ACCORD試験の被験者について、米Temple UniversityのElias S. Siraj氏らが行った検討結果で、6月25日までシカゴで開催されていた米国糖尿病学会ADA2013)で発表した。

 ACCORD試験では、HbA1cの目標値を6.0%未満に設定することで、HbA1c目標値7.0〜7.9%に設定した場合に比べ、心血管死亡、総死亡リスクがともに1.22〜1.35倍に有意に上昇する結果が示された。その原因については、これまでに、低血糖や当初1年間の急激なHbA1c値の低下、体重増、特定薬剤の服用といった要素との関連を調べたものの、いずれも死亡率増大との関連は認められなかった。

 そこで今回Siraj氏らは、高用量インスリン投与が心血管死亡リスク増大と関連する可能性があるとの仮説を立て、後ろ向き試験で検証した。

 Siraj氏らは、被験者のうちインスリン投与量と心血管死亡率とのデータが得られた1万163人について、平均追跡期間5年間のデータを分析した。1日平均インスリン投与量は、総インスリン、基礎インスリン、追加インスリンともに、ACCORD試験の強化治療群の方が、標準治療群よりも有意に高用量だった。

 解析にはCox比例ハザードモデルを用い、心血管死亡と1日平均インスリン投与量との関連について調べた。

 その結果、補正前モデルでは、総インスリン投与量(1単位/kg)増加による心血管死亡リスクに関するハザード比は1.83(95%信頼区間[95%CI]:1.45〜2.31、P<0.0001)と有意な増大が認められた。基礎インスリン、追加インスリンについても、補正前モデルでは同リスクの有意な増大が認められた(ハザード比:それぞれ2.29、3.36)。

 だが、ベースライン時の年齢や心血管疾患歴、心不全など14項目の共変数について補正後には、総インスリン投与量増加による心血管死亡リスクの増大は認められなかった(補正後ハザード比:1.21、95%CI:0.92〜1.6)。

 その他、重度低血糖や体重変化、平均HbA1C値の変化といった試験開始後の共変数を加え、3通りのモデルを用いて分析したものの、結果はいずれもインスリン投与量増加による同リスクの増大は認められなかった(補正後ハザード比:モデルにより異なり、1.21、1.12、0.99、それぞれ95%CI: 0.91〜1.61、0.84〜1.49、0.74〜1.34)。

 補正後モデルでは、基礎インスリン、追加インスリンについてもまた、心血管死亡リスクの増大は認められなかった。

 会場からは、「被験者のインスリン投与順守度についても調べる必要がある」といった指摘があった。それに対しSiraj氏は、「具体的な数値はないが、試験全体で順守度は高かったと思う。それに、順守度の高低は強化治療群、標準治療群ともに言えることではないか」と反論した。

 また、「この試験結果から得られる、臨床医へのメッセージは?」との問いに対し、「同試験結果のみからは、実践的な臨床的勧告はないだろう。ただ言えることは、同試験の被験者のような集団に対し、インスリン投与量増加が心血管リスクを増大するという点は確認されなかった、ということだ」と語った。