英国サウサンプトン大学のRichard Holt氏

 糖尿病は患者本人だけでなく家族にとっても心理的負担となっており、すべての患者がQOLの高い生活を送るためには、一人ひとりの考え方を重視した長期間に及ぶケアや、自己管理促進のための教育システム、社会的サポートなどが必要となる――。糖尿病の心理社会的な側面に焦点をあてた世界的な調査研究「DAWNDiabetes Attitudes, Wishes and Needs2」の結果で、6月25日までシカゴで開催されていた米国糖尿病学会ADA2013)で、英国サウサンプトン大学のRichard Holt氏が報告した。

 2000〜2001年に最初のDAWN調査であるDAWN studyが13カ国の糖尿病成人患者5426人、医療従事者3982人を対象に行われ、患者の良好な健康とQOL維持のためには、患者の心の問題に向き合いながら医療を提供する必要があることが示された。しかし多くの糖尿病患者は、自己管理、治療へのアドヒアランス、ケアにおけるサポート利用などの点で、いまだに問題を抱えている。

 こうした中、糖尿病ケアの障壁や改善要因をあらゆる角度から検証すべく実施されたのが、DAWN2だ。日本を含む4大陸17カ国に居住する、18歳以上の糖尿病患者8596人、家族(糖尿病に罹患していない成人で、患者と同居しケアを担当)2057人、医療従事者(成人糖尿病患者を治療している一般医、糖尿病専門医、看護師、栄養士、その他医療従事者)4785人を対象とした。

 Holt氏は5つの領域に分けて、調査結果の概要を解説した。まず「糖尿病がQOLに与える影響」では、適正なサポートにより良好な健康とQOLが得られる点を指摘した。また、身体的健康の問題や糖尿病に対する負担感があると心理的アウトカムも不良となる一方、サポートによって負担を軽減できれば、良好な心理的アウトカムが得られることを示した。

 「家族の立場からの評価」では、家族の35.5%が、患者ケアを行うことによって自身のQOLに影響があると回答していた。具体的には、精神的健康の問題が44.6%、経済的負担が35.2%、レジャーへの影響が31.0%、身体的健康の問題が26.7%、仕事や勉強への影響が22.9%、家族・友人・同僚との関係への影響が19.8%などと、広範囲に及んでいた。しかし、46%の家族が、患者の心理面へのサポートを行いたいと回答し、39%の家族が糖尿病治療へかかわっていきたいと回答している。患者を助けたい気持ちはあるものの、その方法が分からないとした回答も37%にのぼっていた。

 「患者の自己管理の実態」では、過去7日間における、食事指導(5.3日)、運動(3.8日)、血糖値測定(3.4日)、フットケア(3.2日)、医師の指示通りの服薬(6.1日)を遵守できた日数は十分とはいえず、自己管理改善の必要性が浮き彫りとなった。Holt氏はまた、患者の声を引用し、患者は「医療専門家に、もっとサポートしてほしい」と感じていることを指摘した。医療従事者側も同様の問題意識をもっており、60%の医療従事者は、患者の負担感の軽減のためにも自己管理のためのリソース改善が必要だと回答していた。

 「心理的サポートを含む糖尿病ケアの状況」では、「糖尿病が患者の生活にどう影響しているかを患者に尋ねた」とした医療従事者が51.8%だったのに対して、「尋ねられた」と答えた患者は23.7%にとどまり、立場によってサポートに対する意識に差があった。医療従事者は、効果的なコミュニケーションのための正式なトレーニング(63%)、精神的なサポートとケア(63%)、自己管理教育(61%)、医療チーム内のコミュニケーション(56%)が、改善すべき点であると考えていた。

 また72%の医療従事者は、家族の関与が良好な糖尿病ケアに重要であることに同意。家族の心理的負担軽減に必要な要因は、糖尿病ケアに関する口論が少ないこと、サポートの仕方を知ること、糖尿病管理についてより効果的なコラボレーションが得られることが挙げられた。

 「差別および社会的問題」では、糖尿病患者の19.2%が地域社会で差別や正しく糖尿病が受け入れられなかった経験を有している。家族の21.5%も患者が糖尿病であるため差別を受けたことがあると感じ、医療従事者の32.8%についても、それを問題だと認識していた。また糖尿病のために経験する差別は、患者の糖尿病に関係する悩みと関連していた。

 Holt氏は、「DAWN2によって、糖尿病が糖尿病患者とその家族にとって大きな心理的負担となっていることが改めて確認された。家族と患者を中心に考えた糖尿病ケア、教育、社会のサポートなどが必要で、患者の声を聞き、健康やQOLを改善するためには、対話と連携が欠かせない」と結語した。